ひとのにおい
におい。
彼女はにおいに敏感。
何週間か前に美味しくなくてごめんなさいと捨てたチーズの匂い。それがまだごみ箱に残っているという。
全然分からない。
彼女以外の人が言ってたら気のせいだろうって思うけど、彼女が言うので本当に残っているんだろうなあって思う。
一緒に暮らすようになると、お互いのにおいが似てくると前に見た。
確かに、同じ洗剤で服を洗い、同じものを食べ、同じ空間で生活しているのだからそうなのだろう。
人は良いにおいと感じる人に惹かれるのだが、一緒に暮らすことでにおいが似てしまうので、良くないらしい。そして徐々に旦那の加齢臭が気になって嫌いになっていく的な。
しかしそれは愛が冷めたことで臭いと感じるようになってるのかもしれないからなんとも言えないね。どっちが先か的な。
少し話がそれた。
僕は普段おじさんたちと一緒に仕事をしているから、周りのおじさん臭が染み付いているのか自分からのにおいなのかよく分からない。
彼女から本気でくさいと言われてしまったらと思うと恐ろしい。
昔はいいにおいって言ってもらえてたからなー。
彼女のにおいももちろんあって、ふわっとにおうと落ち着く。
思い出が走馬灯のようによぎりかける。
においには懐かしさとか思い出がついてくるよね。
そうそう、においの趣味が彼女と合うのも良いことだった。
部屋の芳香剤とか、洗剤の匂いとか。
色々喧嘩しなくていいし。我慢もしなくていい。
ありがたいことだ。
とにかく僕は、においに敏感な彼女の鼻に引っかからないよう、いいにおいでいられるように気をつけなければならないのだ。
おわり。