かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

たいわんらーめんからい

 僕の人生において、彼女のような存在は他にいなかった。

 なんというか、うまく言葉にできないのだけれど、初めて出会うタイプの人だった。

 そもそも、僕は女性と仲良くした経験があんまりなかった。

 パッとしない人生を送ってた。

 彼女は出会ったときから僕と仲良くしてくれた。

 彼女のように積極的に声を掛けてくれる人っていなかった。

 いてもそういう人は大抵可愛くなかった。

 可愛くないっていうと失礼だな。僕の好きなタイプではなかった。

 彼女は可愛くて、優しくて僕のこと構ってくれるすごい人だった。

 それに彼女は今までつらい出来事にたくさん遭ってきた人でもあった。

 そういう人もあんまり僕の周りにはいなくって、衝撃を受けた。

 逆に言えば、彼女にとって僕は、彼女の人生の中では出会ってないタイプの人間だったんじゃないかな。

 当時の僕はそこまで考えていたわけじゃないけど、なんとなく彼女にとって僕がつらさを和らげられる存在になれると確信していた。理由は特になかった。あったのは自分に対する自信か。

 そして一緒にいる時間が長くなって、付き合いが深くなっていくと、彼女がものすごくストレートに意見を伝えてくれることに気付く。

 僕がやって嫌だったこととか、気になったこととか、率直に言ってくれる。

 僕が気を遣わずになんでも言ってねと言う必要がない。

 これもまた、初めての経験だった。

 彼女が何を考えているんだろうとか、何か我慢しているんじゃないかとか、勘ぐらなくていいのだ。

 これは僕にとってすごく良いことである。

 それと同時に新しい発見でもあった。

 自分の発言で、こんなにも嫌な思いをしたり怒らせたりしてしまうものなんだなあって。

 それまでは、自分の発言が不快感を与えることなんて無いと思ってた。

 いまいち盛り上がらなかったなとか、言葉が出なくて沈黙気まずいなとかくらいなら思ってたけど、僕の何気ない発言で相手を傷つけてたり、嫌な思いをさせてたりする可能性については全く考えてなかった。

 僕にとって彼女は、新しい発見の宝庫だったわけだ。

 そして今までの僕にはある意味手に負えない存在だった。

 それを一生懸命、彼女に見合う人間になろうって努力してた。

 それは最初の、彼女を幸せにできるのは自分しかいないっていう最高に素敵な思い上がりがずっとあったから。

 さっきも書いたけど、彼女のために努力し続ければ、僕と一緒にいることを選んでくれるっていう自信がずっとあったんだよね。

 不思議。根拠なんてどこにもないのに。

 僕は彼女に、他の誰にもない特別な魅力を感じたんだと思う。

 理由を表現したいんだけど言語化できない。

 第六感にビビッときた的な。

 この先の人生においても、彼女のような存在とは出会わないだろう。

 だからこそ、僕は彼女に夢中になれたのだ。

 そういうこと。

 おわり。