かんしにん
彼女には、自分を見つめるもう一人の自分がいる。
その彼女が、ズルすることや怠けることを良しとしない。
普通、人って誰も見ていないところでは休んだり手を抜いたりする。
それで誰か上司やら先生やら、監視する人がいると、頑張る。
彼女の場合はいつでも手抜きができない。
監視人としての彼女がいるから。
休んでたら、こんなに休んでいてはいけないって思う。
怠けようとすると、それを戒める自分がいる。
本来自分は自分に一番甘いはずなんだけど、彼女は他人よりも自分に厳しい。
だからすごく頑張りやさんだし、無理もしちゃう。
もう少し、自分に甘くてもいいんじゃないのかなって感じるけど、彼女はそう言われたってどうしようもないのだ。
彼女の意思とは別に、監視人がいるのだから。
これはきっと彼女が今までに経験した、つらい思いや嫌な思いが、無意識にブレーキを掛けるようになったんだと思う。
自己防衛のためなのだ。
人って、無意識にやったことが過ちになることが多い。
羽目をはずして騒いだことで失敗をするとか。
ふと放った一言で相手にめちゃくちゃ嫌われるとか。
その無意識を限りなく排除する存在が、彼女の中の監視人なわけだ。
この監視人は相当強い。
彼女の心のところで守りを固めている。
僕がその監視人を追い出そうとしても、難しい。
彼女一人で監視人に打ち勝つことは更に難しいので、僕が風穴を開けるくらいの気持ちで戦いを続けていこうと思う。
もっと自分に優しく。
楽に生きる権利が彼女にはあると思う。
おわり。