遡
数年前の僕にとって彼女は遠い存在だった。
最初に会った時、まさか数年後にこんなことになっていようとは微塵も思わなかった。
今でもよく覚えている。
いきなりやって来た僕にビビる彼女と、初対面の女性にビビる僕。
当時の僕は女性耐性がない。
彼女みたいな可愛い人だとなおさら、どうやってコミュニケーション取っていいかわからないっていう状態に陥ってしまう。
そんなコミュニケーション不全な僕に、彼女はたくさん話しかけてくれて、いつの間にか彼女の可愛さにビビること無く話ができるようになってた。
こんなに僕に対する肯定感を前面に出して接してくれる人は今までいなかった。
おそらくこれが彼女の凄さだと思う。
彼女が好感を持っている相手に対しては、多かれ少なかれこの肯定感というのを与えていると思う。
あなたはとっても素敵ですよ~、あなたのやり方は正しいですよ~みたいなことを言ってもらえてるような気がする。
それを受けて悪い気がするわけがなく。
当時の僕も、すごく自分のことを認めてもらえてるって感じた。
彼女のような可愛い子が僕に対してそんな風に接してくれるわけだから、僕だって最初は距離を置こうとか思ってたけど、そんなことできなくなってくる。
彼女のことを考え、彼女と話す楽しさを知り、毎日話したいって思うようになり、毎日メールしてた。
当時はメールだよメール。
LINEとかギリギリ出始めくらいで、僕は当時LINEはデータを抜かれるとか言って信用してなくてやってなかった。
次第にメールでのやりとりが大変になってきたのと、通話するならLINEが良いじゃんお金掛からないしってことでLINEを導入した。
彼女がいなければ僕がLINEを導入するのはもっと先のことになったかもしれない。
毎日寝る間を惜しんで連絡を取り合ってた。
あの頃は時間も余裕もあったから、朝まで電話しながら起きてたこともあったような。
楽しかったなあ。
こんなに深く一人の女性と同じ時間を共有したことってなかった。
わりと初期の段階で好きだったはずだけど、好きだという気持ちに気付かないふりをしていて、でももう好きって言わずにはいられなくなって、伝えた。
うーんあの頃のことを思い出すとなんだか恥ずかしい気持ちになる。
遠いと思っていた存在だった彼女が、向こうからどんどん近づいて来てくれて、いつの間にか僕もどんどん近づいていって、そうして過ごしているうちに、一緒に暮らすようになった。
僕の人生、順調過ぎる。
躓くことがないよう祈ろう。
おわり。