かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

役立つ僕

 役に立つというブログを書いていて思い出したことがある。

 少し前に、誰と話していた時かは忘れてしまったのだが、彼女が、僕が今の職場にやって来た時のことを第三者を含めて振り返っていた時のことだ。

 当時、僕が来る前のこの職場は、彼女にとって非常に辛く苦しい環境だった。上司は彼女に厳しく当たり、彼女の周囲には真の意味で彼女を理解してくれる人もいないような状態だった。彼女は孤立無援の中必死で頑張っているような状態。

 そんな中僕がやってきた。

 僕が来る前から、仕事ができる奴が来ると上司が太鼓判を押していたらしく、彼女はどんな人が来るんだとビビっていたと彼女は回想する。

 そんな中現れたのは、仕事がびしばしできて、周りに厳しく、ガツガツした人物ではなくて、ぼーっとした仕事ができるのか不安になりそうな奴だったから彼女も肩透かしを食らっただろう。

 彼女にとって、僕が異動してくるという状況はすごくストレスだっただろうと思う。更にやってきたのが、苦労している彼女とは対照的にのほほんと仕事をしてきた僕で、そのくせに仕事ができると評価だけは高いという有様。

 きっと当時の彼女には自分の頑張りが全否定されたに近いような思いもあったんじゃないかなと思う。それでも僕に優しくしてくれて、声を掛けてくれて、僕が職場に馴染めるきっかけを作ってくれた彼女にはすごく感謝している。

 僕という人間を嫌いにはならなくても、僕という存在に付随している評価とか経歴みたいなものに嫌な印象を持ってもおかしくはなかったはずだ。それくらい彼女はこの職場で苦労していて、努力が評価されないという苦しみを味わっていたから。

 今までも第三者を含めた何人かで過去のことを振り返るってことはあって、その度に僕は、僕がやって来た頃の彼女の置かれた状況の劣悪さに同情するのとともに、そこに僕が何も考えずにやってきたことで、少なからず彼女に嫌な思いをさせてしまっていたかなあと申し訳ない気持ちを持っていた。

 話を冒頭に戻す。

 少し前にこの頃のことを振り返っていた彼女は、当時の環境や僕のことを語りつつ「ずっと上司に色々言われていたのが(僕)が来てからなくなったから、(僕)が来てくれて救われた」と言ってくれたのだ。

 僕にとって意外な言葉で、その時はただ聞いていることしかできなかったのだが、じんわりと嬉しさが込み上げてきた。

 僕は当時から、彼女を少しでも楽にしてあげたい、助けてあげたいと思っていた。でもそれができている実感というのが湧かなかった。いつも何かしら問題があったし、彼女が苦しんでいることも多かった。

 だから勝手に、僕の力では何も変えられないんじゃないかとか、少し良くなったような場面があっても、彼女に実感がなければ何の意味もないなとか思っていた。

 彼女を救いたいという強い思いはあったけど、彼女を救えたという実感がなかった。

 でもこの時、彼女がこう言ってくれたことで、初めて、あの時の僕が彼女の役に立ってたんだって分かった。嬉しかった。

 少しだけ、自分の評価が上がった瞬間だった。

 彼女がそんな風に思ってくれてたことがすごく嬉しい。

 もしかしたら色んな場面で僕は彼女のことを救えてるのかななんて調子に乗ってしまいそうだ。

 思わずでた言葉だったのか、意図して言ってくれた言葉なのか分からないけど、とにかく僕にとってすごく印象深い、良い出来事だった。