かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

アピール

 前の職場のおばさま宅にご飯をお呼ばれしてきた。

 美味しいご飯を頂いて、わいわいお話をした。

 彼女が僕の株を上げるような話をたくさんしてくれて、それを少し照れながら、喜びながら聞いていた。

 じゃあ逆に、僕が彼女の株をあげるような話をしてあげられたかというとそうではなかった。

 余計なことは言うけど、肝心なことは言わない。

 彼女が話してくれるのに満足して、自分発信で話を進めるっていうことをしなかった。

 結果、彼女は僕のことを持ち上げてくれて、相対的に彼女自身の評価を下げるような格好になってしまった。

 会話の中で、彼女は頑張って話を盛り上げようとしてくれてた。

 そうやって話せば話すほど、自分の評価が下がっていることを感じながらも話をしてくれていた。

 つらかっただろうなと思う。なんにも楽しくなかっただろう。

 そんな時、僕は隣で、愛想笑いみたいなのを浮かべながら大して話に参加もせず、たまに会話に参加してくれば彼女の立場を悪くするような事を言い、彼女を助けてあげなかった。

 それが彼女にとってどれくらいショックだったか、想像すると胸が締め付けられる。

 帰り道で彼女とこの話になって、僕は彼女に苦しい思いをさせてしまった申し訳無さでいっぱいになった。

 自分が原因で彼女につらい思いをさせてしまったと慌てた僕は、こういうところが良くなかった、こうすればよかったっていう反省ばかりをしてしまった。

 そればっかりが先走って、彼女がどれくらいつらかったかについて深く考えることをしなかった。

 結果、彼女の今の気持ちを無視して自分のことを話すような状態になっていた。

 彼女にそれを指摘してもらうまで、そんなことにも気付けなかった。

 だめなことばっかりしている。

 自分のどうしようもない愚かさがつらくなるけど、彼女は僕の何倍もつらい思いをしてる。

 つらいってことを僕に分かるように解説させるなんて、ものすごく彼女の心を傷つけてしまっているはずだ。

 ほんとうに僕はなにやってるんだろうって思う。

 今日の一連の流れを振り返って、自分の良くなかったところとか気の利かなかったところというのはたくさん見つかる。

 彼女の良くなかったところは僕からすればなかった。

 良かったところはたくさんあった。

 まず僕を褒めてくれたこと。

 これは僕が嬉しかったっていうのもそうなんだけど、きっとおばさまも楽しく聞いてくれたと思う。僕の悪口を言うよりも、褒めるほうが圧倒的に良い印象だ。恋人の話をすると愚痴っぽくなりがちなところ、僕をたくさん褒めてくれた彼女に対する評価は良いものだったはずだ。

 クッキーを差し入れたこと。

 これは絶対高評価だった。

 手作りってことに驚いてくれてたし、おいしいって食べてくれてた。

 こうやってクッキーを作れること、気を利かせて持ってくること、これができるのは素晴らしいことだと思う。

 前回もケーキの差し入れを持ってお邪魔しているし、これは僕の発案ではなく、彼女の気配りであることは確実に伝わっている。

 たくさん話をしてくれたこと。

 僕がしゃべらないから、彼女にはだいぶ無理をさせてしまった。

 僕の分まで話をしてくれていることは、きっとおばさまご家族にも伝わっていたと思う。

 僕に対する評価が低下してもおかしくなかったが、彼女が話してくれることでそれは回避できたし、むしろ彼女がしっかりしているという評価に繋がったんじゃないかと思う。

 彼女がでしゃばって話をしているとか、彼女の話がつまらないとかそういう雰囲気ではなかったのは間違いない。

 どれも僕の主観だし、脳天気な解釈かもしれないけど、僕はこう思った。

 彼女がどんな風に感じていたかも聞いていて、その意見にも納得している。

 言いたいことがまとまらなくなってきた。

 僕はもっと彼女を好きだってことを前面に出さなきゃって思った。

 今までの人生の中で、押し留めておくことはしてきたけど、プッシュするってしたことがない。

 そのせいで、僕の気持ちが彼女にも、周囲の人にも伝わりにくくなっている。

 特に周囲の人にはもっとアピールするくらいの気持ちで挑まなくちゃいけない。

 中学生じゃないんだから、スマートに彼女が好きです、こんなところが素敵ですって言えよ僕。

 彼女には、もう変わらないんじゃないって言われたけど、変わるための努力をする。

 彼女のこと大好きだから、彼女の良さをもっとアピールしたい。

 おわり。