かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

最終日

 彼女のお仕事最終日。

 ほんとは職場に顔を出して彼女の労をねぎらおうと思ってたんだけど、くまもんが最近みんな殺気立ってるから来ない方がいいと言うのでやめた。そこまで言われたら行く気もなくなる。
 仕事終わりに会いに行くつもりでいたので、問題はない。
 彼女から、退職の挨拶を手紙で書くとのことで、協力をお願いされた。
 頼って貰えるの嬉しい。
 善は急げ、今日、仕事終わりにファミレスで書くことにした。時間と場所の確保が容易にはできないので困る。
 軽い食事をして、手紙の執筆作業に入った。
 こんな風に書いたらどう?って感じの提案を、彼女が噛み砕いて、文字にしていく。
 協力して何かを作り上げていくの楽しい。
 僕のざっくりした意見を、うまく形にしてくれる。
 何度もブログで触れているけど、彼女は字が上手だ。すごく好き。
 綺麗な字で書かれた手紙が完成していくのを見るとうきうきする。
 対する僕は手紙を書くのがものすごく苦手。文章を考えるのはいいんだけど、書くとなるとすごくミスする。
 何度も何度も書き直さないといけない。字も上手じゃないし。
 彼女はほとんどミスしないで書き上げられる。そして完成品はとっても美しい。
 彼女には手書きで色々書いてもらいたくなる。
 そんな感じで、手紙は無事完成した。お礼状か。
 昨日、彼女はすごく落ち込んでいた。今まで仕事をすごく頑張ったけど、そうやって頑張った意味があったのだろうか、と思い悩んでいた。自分がいないほうが良かったのか、早くいなくなればよかったのかって考えてたみたいだった。
 そんなことない!って僕は強く思った。
 でも、みんなの気持ちなんて分からないよね。僕にも彼女にも。想像することしかできない。だからこそ彼女は悩んでたわけで。
 彼女が安心するために必要なのは、みんなが「いてくれてよかった!」って言ってくれることなんだよね。
 先にも言ったように、今日が彼女の出勤最終日だった。
 彼女にプレゼントを持ってきたり、会いに来てくれたりした人がたくさんいたみたい。
 貴婦人さんとか、Tさんとか、ブッダさんとヤショーダラーさん。だるまさんもか。あとその他数名。
 みんなに大切に思ってもらえていることが具体的に示された瞬間である。
 本当に良かったなあと思う。
 こんな風に何かしてもらえるってことは、今まで彼女がそうしてもらえるだけの何かを相手に与えていたってことだ。
 彼女が仕事を頑張っていた意味、ずっと今の職場でやってきた意味っていうのは間違いなくあったと言える。
 みんなに思ってもらえてる。その何倍も彼女はみんなのことを考えてた。当然のご褒美だと思う。
 みんなからのメッセージが書かれた色紙も、用意されてた。
 頼れる人だったというようなことがたくさん書いてあった。彼女に色々教えてもらって、一人前になれたって書いてある人もいた。
 彼女がしてきたことは、全部じゃないけど確実にみんなに伝わっていたんだなって感じた。
 彼女が一生懸命後輩に仕事を教えたのも、ちゃんと伝わってる。どれくらい苦労したかまでは伝わってないかもしれないけど、彼女のおかげで成長したと思ってくれてる。感謝してくれてる。
 僕は鼻が高い。僕の大好きな人はこうしてみんなに感謝されるのが似合う。それだけのことをしてきてるのだから当然だと思う。もっと感謝されていい。
 彼女がいてくれてよかったって感じている人はたくさんいる。これは間違いない。
 辞めるって言ったら泣いてくれる人がいるんだよ。すごいことだよ。
 彼女を引き止める人が少なかったのも、彼女がしんどかったりつらかったりしているのをうっすらでも感じてる人が多かったのかなと思う。いっぱい頑張っていたことって伝わってるんじゃないかな。しっかり者で頼れる彼女が、辞めると決断したのだから、今更引き止めるのは失礼だと思った人もいるかもしれない。
 彼女がいなくてもいいって思ったから引き止めなかったってことではないはずだ。
 彼女自身が思っているよりずっと、彼女はみんなから愛されているんだと思う。
 実感がなくてピンと来ないかもしれないけどね。
 僕はすごく安心した。みんな彼女のこと好きなんだなって思う。客観的に見てそう思う。
 よかった。
 彼女は今までずっと、立ち止まることなく頑張り続けてきた。やっとここで休憩できる。仕事のことを考えなくていいっていうのはすごく良いことだと思う。彼女にはそういう時間が必要だ。
 半年くらいゆっくりしてもいいんじゃないかと思ってる。
 長い間おつかれさま。
 仕事のことはぱーっと忘れて、自由を謳歌して欲しい。
 おわり。