かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

ドッキリ

 仕事から帰ってきた僕は、あまりに眠くてしんどかったので一休みすることにした。

 お風呂と食事を済ませ、ベッドに横たわる。

 22時にアラームをセット。

 彼女が仕事から帰ってくる時には目覚めているという作戦だ。

 目を閉じて数分と経たないうちに眠りについた。

 どれくらい経ったか分からないけど、スマホの着信音で目が覚めた。

 寝ぼけてるから、今がどういう状況なのか理解ができない。朝なのか夜なのか、寝てから何分経ったのか、何時間たったのか、全くわからない。

 反射的に電話に出る。彼女からだ。

 その瞬間で「何かあったのかな、今何時かな、やべえ寝すぎた、彼女から電話の前に連絡来てたかな、怒ってるかな」とか考える。回転の悪い頭で一生懸命。

 電話は繋がってるんだけど、音が全く聞こえてこない。

 もしもーしって言っても反応がない。

 あれ?おかしいなって思ってスマホとにらめっこするも、不具合は見当たらない。

 通話状態にはなってる。彼女のほうからの音は全く聞こえない。もちろん僕が何か言っても反応はない。

 もしもーしもしもーしって言ってたら切れた。

 通信状態が悪くて、音が聞こえないまま勝手に切れるっていうことはたまにある。今回もそれかなあって思った。

 メッセージを送ってしばらく反応を待つ。反応がない。

 ものすごく緊急な連絡とか、もうとにかく電話を掛けることしかできないような状態とか、そういうことなのかとも考えた。

 こちらから電話を掛けてみるも、応答がない。

 僕には想像できないアクシデントに見舞われているのかもしれない!って心配になってきた。

 しばらくするとまた彼女から電話が掛かってきた。

 急いで出るも、やはり声が聞こえない。

 とっても困った。

 電話の向こうで必死に喋っているのが届かないんだとしたら、かわいそうだ。

 あきらめずにもしもーしって言い続けてたら、また切れた。

 状況が掴めないまま、彼女にどうなってるんだーっていうメッセージを送った。

 彼女の反応は至って普通だった。

 なにが?みたいな。

 僕の混乱は一層深まる。

 彼女は声が聞こえなかったことを何とも思ってない雰囲気。

 あれ?電話掛かってきたよね?彼女が掛けてきたんだよね?でも全然気にしてなさそう、なんで?ってなった。

 僕の声聞こえてた?って言ったら、聞こえてるって言う。

 そちらの声が聞こえないんだけどって言ったら、そりゃそうだと言う。

 喋ってないもんって。

 え?ってなった。

 まさかのドッキリ。

 二回の通話とも、マイクを切ってたか声を押し殺してたかして、焦る僕の声を聞いてたらしい。

 相当なおちゃめさんである。

 僕はそれを聞いて、安心した。

 電話壊れちゃったんじゃなかったんだー!声が聞こえない不具合とかじゃなかったんだー!って。

 もちろん、やられたー!っていう思いもあった。

 ぐーすか寝てた僕をちょっと懲らしめてやろうって思ったんじゃないかな。

 彼女の掌の上で、うまく転がされてしまった。

 たまにこういう面白いことを仕掛けてきてくれるので、退屈しないし楽しい。

 彼女のこういうところ大好きだ。