べんりや
彼女は僕を便利屋さんだという。
それは、彼女の様々な要求に対して、それなりに応えられているってことなんだと思う。
おせんべいが食べたいと言えば、どこかで買って持ってく。
ネット上で見かけた〇〇というものが気になると言えば、詳細を調べてお知らせする。
お化粧品を買いたいけどどれがいいか分からないと言えば、口コミサイトなどで、評価をみたり人気度をみたりしておすすめを提示する。
作ってみたい料理があればレシピを検索する。
薬の飲み合わせに関しても調べてお知らせする。
体調不良時の症状によって考えられる病気を調べてお知らせもできる。ついでに症状の詳細や対処法なんていうものも調べる。
友達と遊ぶ予定とか、美容院に行くなんていう予定も、メモしておく。必要であれば予定前に通知もする。
起きたい時間を教えてもらえれば、モーニングコールもする。
観たい映画とか、欲しい本とか、気になったものを代わりにメモしておく。
行きたい場所があれば連れていく。
そんな僕を、彼女は時折、マネージャーのようだと表現することもある。
スケジュールの把握、必要なものの提供、身体的精神的なケア。
差し入れを持ってきたり、彼女の好きそうなものを用意しておくなんていうのも、マネージャーっぽいのかもしれない。実際のマネージャーさんってどんなかよくわからないから何とも言えないけど。
彼女曰く、私が好き勝手やった後のしりぬぐいをしてくれているということらしい。それに関しては自覚がない。彼女は好き勝手やって後は知りませーん!っていうタイプじゃないしね。しりぬぐいをさせられてる感じはない。
ただ、僕がいることで、好き勝手やれるような環境を提示できているのかな、とは思う。
僕がいるから、ちょっとこれに挑戦してみようかなとか。僕がいるからあとは丸投げできるな、みたいな。
彼女の言う、マネージャーとか便利屋さんというのは、都合よく使えるやつという意味ではない。彼女のことが好きでなんでもホイホイいうことを聞くから、いいように使ってやろうというような考えの元でいろいろ頼んでくるわけじゃない。
僕に期待して、僕だったら彼女の要求に応えられるという信頼のもとで、依頼をしてくれているのだ。
依頼をこなすことによって発生する報酬というのは、彼女の感謝の言葉であり、より大きな信頼であると思っている。
こんなにいろいろやってくれて、大好き!!って思ってもらえるのが一番の報酬である。
そうなるかは別として、彼女のために役立つことができるというのは僕にとって大きな喜びだ。
彼女は便利屋さんがいて嬉しい、僕は彼女の役に立ててうれしい。
完璧だ。