かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

よいよい

 職場を去って五日が経過した。

 別件で忙しくて、あっという間に時間が過ぎていく。新しい仕事が始まるまであと二日しかない。

 昨日の夜、ひよこ頭のY君から連絡が来た。

 座敷わらしの一件があったし、どんな状態かなあって気になって話をしてみた。

 彼女が食べ物で頭をはたいたのは結構衝撃だったよう。彼女が食べ物に謝ってたのは面白がってた。

 ただこいつ、酔っ払ってたから話が分かりにくい。

 このくだりくらいはわりとまともに話ができた。でもこのあとからどんどん会話が噛み合わなくなっていく。

 まず、彼女がすごい頑張ってるって言い始めて止まらなくなった。

 彼女を評価してくれるのは嬉しい。分かってくれてる人がいる、というのは彼女にとってかなり助けになるはずだ。

 職場で、頑張りを理解して味方になってくれる人がいれば、少し楽になるはず。

 ただその主張がループする。

 嫌なことばっかりやらせて申し訳ないとも言ってた。

 誰かを注意したり、叱ったりするのを、彼女任せにしちゃってるってことだと思う。何か問題が起こった時に、彼女に全部やらせちゃってるみたいな。

 確かに、僕やY君がこれじゃいかん!って思う前に、彼女は気付いてくれる。僕らよりだいぶ早く問題視して、行動してくれる。おかげで職場がなんとか回ってるんじゃないかなあ。

 Y君がもっと早く行動できれば、彼女に無理させなくていいって思ってるのかな。

 僕はずっとそれを思っていたけど、Y君も気付いていたんだなって思った。これも嬉しかった。

 思えば、Y君は結構前にも「嫌なこともちゃんと言ってくれるポジションってすごく大事、でも損な役回りだよね」みたいな事を言ってた。

 彼いわく、僕はお兄ちゃんで彼女はお姉ちゃんみたいなものなんだと。

 僕がいなくなってから、彼女は無理してて、見ててつらいってのがY君の主張。

 彼女にそれを伝えたら、僕がいなくなってから、たまたま大変なことが起こってるだけだって言ってた。確かに。座敷わらしが前髪を切るのなんて僕がいてもいなくても起こる。

 きっとY君自身が寂しいんだよって彼女が分析してた。それはありそう。

 結局このY君とのやり取りは一時間以上続いた。

 僕が嬉しかったのは、Y君が彼女のことをすごく考えてくれてること。心配して、助けてあげたいって思ってるってこと。

 まあでも、Y君が彼女を助けるっていうのはしっくりこない。彼女がY君を助けるっていうほうがだいぶしっくりくる。

 彼女を助けたいと思ったら、彼女に迷惑を掛けないように自分の仕事をしっかりやることが一番大事だと思う。彼女のことを気にしてくれるのは嬉しい。でも自分の仕事を疎かにしてミスしたら、フォローしてくれるのは彼女だからね。

 僕がいなくなって、彼女とY君に負担が増えるだろうなっていうのは思っていた。でもこの分なら大丈夫かなって思う。

 Y君も転職の準備をしているようだし、彼女もY君が抜けるタイミングで職場を去る計画を立てている。

 あの職場に長く居続ける必要は皆無だ。

 彼女はY君が言うほどは無理してないし、すごく頑張っているわけでもないよって言ってた。そのほうが僕は嬉しい。

 僕がいないとダメかも!というようなおごりがあったけど、いなくても大丈夫そうだなって思った。

 彼女はしっかりやってるし、Y君も頑張ってるみたいだ。

 安心した。

 酔っぱらいY君が言ってたことは、全て本音だろうと思う。

 だとすると、Y君は僕と彼女のこと大好きだ。よかったなあって思う。僕と彼女が協力して仕事をしてきたこととか、Y君の面倒を見てきたことが、きちんとY君に伝わってたのかなって。

 この三人での付き合いは、今後も続けていきたいなって思う。