きっかけ

　彼女には弱い心を見抜く力がある。

　自分に甘いとか、楽をしようとしているっていうのを見抜ける。

　だから、僕がそういう弱い心を持っているのもすぐにバレる。僕自身が気づいていないようなことでも、彼女にはお見通しだ。

　そうすると、彼女は、それでいいの？って言ってくれる。それは僕であっても、他の人であってもだ。

　その人の弱さが、その人の問題だけで収まっているのならば良い。放っておけば良い。でもその弱さが周囲に迷惑を掛けたり、なにか問題を起こしてしまう場合は違う。

　だから彼女はその問題が発生する前、あるいは大きくなる前に、手を打つ。

　弱さが引き起こす、行動や発言をたしなめてくれる。

　それで気付いて、修正できるのと一番良い。そうすれば問題も起こらない。

　彼女の指摘によって、僕は自分の弱さを自覚し、修正に努めてきた。

　彼女には、自分を変えるきっかけを与えてもらえたって思っている。すごく感謝してる。

　まだまだ弱い部分はあるけど、以前に比べたら成長していると思う。

　ただ、僕のように素直に弱さを自覚できる人間ばかりではない。

　自分の弱さに気付かない人は多い。痛い部分を突かれて逆ギレする人もいるくらいだ。

　彼女がしているのは、相手にきっかけを与えることだと思っている。

　よりうまく仕事ができるようにアドバイスをするとか、ギクシャクした人間関係を立ち直らせるためにフォローするとか。それによって状況を改善するきっかけを与えている。

　それを受けて行動するのは本人だ。

　いくら良いことを言っても、的確な指示を出しても、実行する人物がダメなら無駄になってしまう。

　これは彼女の責任ではなくて、相手の責任だ。

　右の道には落とし穴があるよ！左の道を行って！って言われたのに、右の道へ行って落とし穴に落ちたら、落ちた人が悪い。

　彼女はそういうバカのせいで、何度もつらい思いをしてきた。自分の思いやりが全く役に立たないっていう経験を何度もしてきた。

　周囲のレベルが低すぎるんだよね。

　今の職場にはそういう人が多すぎる。

　与えられたきっかけを、きちんと受け止めて自分のものにすれば、必ず成長できる。彼女の言ってることに間違いがあるわけではないからね。

　それは僕が身を持って証明してきた。彼女が側にいることで成長できたからね。

　彼女は弱さを見抜き、それに気付いて修正するきっかけをくれる。

　誰に対してもだ。

　そんな風に人のことを考えて、その人のためになることができる人ってそうそう居ない。

　この彼女の素晴らしさを、もっと多くの人に気付いてもらいたい。