気付かれない優しさ
昨日、彼女と仕事前に買い物に行った。
ミシンを使うために、布を買わなくちゃ!ってことでお裁縫グッズを売ってるお店に。ああいうのはなんて言うんだ、手芸店か!普段行くことがないお店だけど、行ってみると楽しい。
しばらく見て回って目的のものを購入。
目的達成!なんだけども、僕たちにはもう一つの目的があった。
それは、座敷わらしにかばんを買ってあげること。
これは彼女からの提案だった。
座敷わらしは仕事に来る時にリュックを使っている。
それがものすごくボロボロで、変えろと言っても買う気配はない。このままではずっとそのボロボロリュックのままだ。見るに堪えない!ってことで、買ってあげるのはどう?って話になった。
ちょうど、少し前が座敷わらしの誕生日で、タイミングが良い。
かばん選びを始めて、彼女とどんなものが良いか相談しながら見て回った。
「確かあいつは背負えないと嫌だって言ってたよね」とか「今のリュックをぱんぱんにしてるから同じくらい入るものがいいよね」とか。
彼女も僕も、めちゃくちゃ座敷わらしのことを考えてあげてた。
今までも、共通の知人にプレゼントを渡すという経験はあったが、ここまで真剣に相談して悩むことはなかった。
一生懸命選んでいると、彼女が親とか姉みたいな視点から選んであげていることに気付く。
こういう素材だとすぐボロボロになっちゃうからとか、この方が出し入れがしやすいとか、手のかかる娘とか妹に対しての思いやりのようなもの。
座敷わらしから迷惑ばっかり掛けられて、たくさんイライラもさせられて、それでもこれだけ思いやってあげられるのは、本当に優しいからだと思う。
最終的に、座敷わらしのイメージにピッタリのリュックか、少し大人っぽいけど使い勝手が良さそうなリュックかの二択になった。
彼女は大人っぽいリュックが気に入ったようだった。でも座敷わらしがこれをもらって喜ぶのかという不安が拭えない。イメージにピッタリのリュックを選ぶのは無難だが、それだって喜んでもらえるかは分からない。
悩んだ結果、これからもう少し大人になりなさいという意味も込めて、大人っぽいリュックをプレゼントすることにした。
可愛さをプラスしたほうが喜んでくれるんじゃない?という彼女の提案で、飾りをつけることに。かわいいリボンを飾りつけて完成。
大人っぽいリュックに適度な可愛さがプラスされてとっても良い感じになった。
リュックを選ぶ一連の流れの中で、彼女の優しさを改めて感じた。
正直、座敷わらしがどんなリュックを使ってようがどうでもいいのである。もちろん、みっともないなあと思うし、見てて良い気分はしない。変えろよとも思う。
そんな風に思っているだけじゃなくて、買ってあげようって思えるのが優しい。この発想ができるってことが大事だ。僕にはなかった。
そして、なかなかよいリュックが見つからないときも、座敷わらしのことを考えて懸命に探してあげるのも優しい。たくさん悩んで、投げ出したくなりながらも、思いやってあげる。
気に入るか、使い勝手は良いか、耐久性はありそうか、色んな要素を考えてあげてた。おそらく本人がリュックを買おうとしても、そこまで考えないであろう範囲まで。
これだけ考えてもらって、座敷わらしは幸せ者である。本人がそれに気付くことはないのが非常に残念だ。
このプレゼントが、座敷わらしを喜ばせるものになるかはまだ不明で、不安もある。でも一日経って、僕はこのプレゼントに自信が出てきた。彼女の思いやりが全てではないにしても、座敷わらしに伝わるんじゃないかなって思う。少なくとも彼女の優しさはきっと伝わる。
「そのリュックみっともないから変えろよ!」というところがきっかけではあるけど、彼女の優しさが生み出した素敵なプレゼントが用意出来た。
それに協力出来た僕はとっても満足している。
おわり。