かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

大人っぽい時計

遊んだ話

　お誕生日プレゼントの話。

　今年の彼女への誕生日プレゼントは何にしようか、そう考えた時に、やはり普段使えるものや身に付けるものが良いのではないかと思った。

　部屋に飾る素敵な雑貨とか、素敵な本とかも候補に上がる時はあるんだろうけど、僕の気持ち的にそれはちょっと違うな、という感じだった。

　そして、今年は彼女が欲しがっているものをプレゼントするのはやめようと決意した。以前の会話の中で出てきた欲しいものとか、一緒にでかけた際にこれいいねって言ったものとかではない、彼女の記憶にないものを選ぼうと。

　なぜなら、彼女の知識の中にあるプレゼントを用意してしまったら、彼女の想定の範囲を越えることはできず、彼女の喜びも「あぁこの間欲しいって言ってたこれにしてくれたんだね、ありがとう！」みたいなものになってしまうんじゃないかという危惧があったからだ。盛り上がりに欠けるというか。サプライズ感が薄いというか。

　去年の誕生日プレゼントは彼女が欲しいって言っていたお財布だったのだが、あの時も安易だなとは思いつつも、でもどうしてもあげたいって思ってプレゼントした。結果、喜んでくれたけど何か今ひとつ足りないんじゃないかと僕は思った。勝手に。言われてはない。

　欲しがっているものをあげるってプレゼントの一番楽な方法で、僕はそういう楽な方向に逃げちゃいけないなって思った。誰もがそうあるべきと考えているわけじゃなくて、僕が彼女にプレゼントをする時には、自分が精一杯考えてその時に出せる最善を用意しなければならないと思っているだけ。

　そこで、今の彼女に必要そうなもの、僕のある程度知識のある分野のもの、そして上のほうで書いた、身に付けるもの、この辺の条件を加味して考えた結果、腕時計をあげよう！って閃いた。

　後は僕が彼女に似合うかなとかデザインがいいなって思う時計を探すだけ。ネットで時計屋さんのサイトを見て、だーっと並ぶ時計を眺め数時間考えこんだ。

　最初のほうでピンときた時計があって、でもそれが良いとは限らないなと思って調べ続けたのだが、結局最初に気に入ったもの以上の時計は見つからなかった。

　ただ、この時計で良いのかというのは非常に悩ましいところだった。

　僕は文句なく好きなデザインである。彼女に似合うとも思う。ただ、彼女が気に入るかというと自信が持てないところではあった。決して嫌いなデザインってことはないんだと思うけど、すごく好きかって言ったら違うだろうなという。

　今回の選ぶ基準として、今彼女が持っている時計とは違うタイプのもの、そして今後使っていけるものというのを自分の中で設定していた。彼女が気に入るか、似合うかっていうのももちろん考えたけどね。

　彼女はポップというか可愛いデザインが好きで（といってもあまりゴテゴテした可愛さは好きじゃない。上品な可愛さが好き）大人ぽいとかシックなデザインっていうのはあんまり選ばない。

　今回のは普段使いからフォーマルな場面でも使えるくらい、シンプルで大人っぽいデザインの時計だった。

　だから、もしかしたらこれをプレゼントした時の彼女の反応は芳しくないかもしれないなって思った。

　でもこういう時計が一本あっても困らない！きっと必要な場面が来る！彼女が自分で買わないようなものをあげるのが良いんだ！と自分を納得させ購入した。

　うじうじ考えるのが好きだなあって自分で思う。

　そしたら今日、お茶してる時に彼女が「最近時計が欲しいんだよね」というようなことを言った。僕は平静を保つために必死だった。いいと思うデザインのものがないとか、文字盤のデザインはよくても、バンド部分が気に入らないとかあるよねとか、ひとしきり会話をして、僕は結構自信を喪失した。

　じゃあプレゼントを渡しまーす！という時も、渡す時に色々言い訳したくなったけど必死で我慢した。

　包装を開けた彼女はびっくり！って顔をしていた。今日欲しいって言った時計がそこにあるんだからそりゃあびっくりするだろう。貰えるもの当てた！って思ったらしい。私の欲しいものを当てた！とならないところが面白い。

　やっぱりデザインはすごく気に入ったとはならなかったみたいで、わお！！っていうような反応は貰えなかったけど、喜んでもらえた。

　彼女は大人っぽいデザインの時計が自分にしっくりこないみたいだったけど、さっそく付けてくれたのを見ていると、似合ってるなあって思った。主張する時計じゃないから馴染むし、彼女の服装の雰囲気にもあうはずだ。

　今の彼女には、可愛い物も大人っぽい物も両方似合うんじゃないかな。両方楽しめるいい時期なのかもしれない。

　2歳の子にぴったりサイズの服を送るんじゃなくて、少し大きめの服を送るように、彼女にもこれから使っていけるような時計をプレゼントできて、よかったなって思っている。

　ちょっとしたお出かけの時とか、ちょっとお堅い場とか、この腕時計が今後活躍してくれると嬉しいなと思う。

　おわり。