貰い上手
彼女は貢がれる才能がある。
貢ぐと表現するとなにやらいやらしい雰囲気がしてしまうけど、彼女の方に貢がせてやろうなんていう意思は全く無い。
勝手に貢がれるのだ。
勝手に貢がれるってどういう状態だよって言うと、何も言わずとも彼女にプレゼントをしてくる人がいる、という状態。
全く交流がない人がいきなり、プレゼントです!って持ってくるようなアイドル的なものではなく、交流のある職場の人とか友人とかそういうジャンルの人たちね。
前にも述べたTさんは彼女だけに留まらず色んな人に差し入れをするようになったけど、彼女に差し入れをしたことがきっかけだ。それも別に彼女がおねだりしたわけではなく、Tさんが笑顔で「どうぞ!」って差し出したところから始まった。今でも彼女に渡す差し入れだけちょっと品数が多かったりして、特別。
Tさんは彼女の誕生日プレゼントとして大量のお菓子を差し入れる計画を立てているようで、彼女に次に会える日を確認してきたらしい。誕生日も把握していたようだ。彼女への愛が大きすぎてやばい。
Tさんがお菓子をくれるらしいという話を彼女がチンピラにしたら、チンピラは彼女の誕生日が近いことに食いついて、プレゼントをしてくれることになったらしい。チンピラのこういうフットワークの軽さは評価できる。
結局かなりいいものを買ってもらえたようで、彼女は喜んでいた。
なんで彼女はこういう風にプレゼントをよく貰うんだろうって考えてみた。
一つは、彼女としては完全に冗談なんだけどとりあえず欲しい物を言ってみるという姿勢、これが相手をプレゼントしてあげたいという気持ちにさせるんだろうなって思う。
プレゼントが特別欲しいと思っていない時に、なにかプレゼントしてあげるよって言われたら「いや、別にいいです…」ってなってしまうと思う。なんで急に?ってなるし。彼女にもそうなる時がないわけではないが「じゃあこれがほしい!」って言うことができる。
なにかあげようって思っている人に対して、それを断るのは、その人の好意を無下にしてしまうことになる。
だからこそ彼女はこれがほしい!って言うわけだ。この機会に高いもの買ってもらおう!とか思っているわけでも、自分で買おうと思っていたものを買ってもらって得をしようと思っているわけでもなく、相手の好意を潰さないために、冗談ですよーって感じで欲しいものを言う。
そうすると相手としては、よーしじゃあ買ってあげよう!っていう気持ちになる。気持よくプレゼントできるっていうのかな。あんまり遠慮された後に買ってあげるよりも、スパーンと買ってあげられて気持ちいい。
こういう感じでプレゼントをあげる人は、彼女に対して、好意があるし喜んでもらいたいっていう思いがあるからプレゼントをするわけだが、同時にプレゼントをしてあげて喜ばせてあげられる自分に酔っている部分があると思う。
彼女はプレゼントを貰えて嬉しいし、相手はプレゼントをあげられて嬉しい。誰も損をしない素敵な状態が完成する。
あんまりにも同じお菓子を貰いすぎて、彼女が困ってしまうというちょっと悲しい事態は発生してしまっているけれど、基本的にはみんなハッピーだ。
彼女は、そうやって自分が欲しいものをちゃんと言ってくれるし、大喜びしてくれるし、お礼もちゃんと言ってくれるし、プレゼントしがいがあるんだよね。
彼女は貢がれることで、貢いでくる相手をハッピーにしてあげることができる。
与えられているだけじゃなくて、相手にも与える。
すごい。
プレゼント貰い上手ってことかな!