しょく
彼女はパンが好きだ。
以前、ご飯より断然パン!と彼女は力強く語っていた。
食パンはそのまま食べるのが好き。パターロールももちろんそのまま。彼女は本当に、パンそのものが好きなのだと思う。
あ、そうそう確かデニッシュは好きじゃないんだって。
僕もパンは好きだし、食パンをそのまま食べるのも結構好きだ。でも彼女には負ける。僕はそのまま食べるよりもトーストするほうが好きだし、更に言うなら何か具材が乗っている方が好きだから。
彼女はこういう、なにも付けず、なにも掛けず、そのままのものを食べるっていうのが多い。
サラダはなにも掛けず食べるらしい。あと乾燥わかめもそのまま食べる。あと、僕は結構衝撃だったのだが、塩をそのまま食す。これはわりとする人いるらしい。彼女には幼少期に味噌をそのまま大量に摂取していた過去もあるので、塩分の過剰摂取が気になるところではある。毎日一定量食べているというようなクレイジーさはないので、余計な心配かもしれないが。
彼女は素材そのものが好き、というのが多いのかなと思う。
わかめの入った味噌汁が好きというんじゃなくて、わかめそのものが好き、みたいな。
逆に素材そのものを楽しむ前提のフルーツ類はあんまり好きじゃないらしい。好んで食べるのはパイナップルくらい?フルーツ全般が好きじゃないっていうのは僕にとって軽い衝撃だった。食べられないわけではなく、好んで食べないということらしい。
ほしいもが好きなのも、素材そのものに近いからかなあ。
彼女の食の好みというのは、僕が勝手に常識だと思って凝り固まっていた狭い視野を広げてくれる。好き嫌いはあるけど食に対するこだわりとか執着みたいなものが薄い僕にとって、彼女はすごく興味深い。
彼女の影響で、僕も食べ物に対する探究心というのが芽生えてきて、食べたことのないものを食べてみるとか、苦手と思ったものを食べてみるとか、少しずつ自分の世界が広がっていくのを感じる。
わりと好みが違うのに、一緒に楽しくご飯が食べられるのも面白い。お互いのものを分け合うこともできるし。
食べる方向への興味は高まったけど、作る方向の興味は今のところない。なにかのきっかけで彼女が料理にハマったら僕もつられてハマりそうではある。お菓子作りは彼女の影響だしね。今のところそれはなさそうだけど、もし作ったら彼女に食べてもらいたくなるだろうなあ。