かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

質の向上

 最近チンピラの扱いを覚えた僕たち。

 チンピラを「仮にも職場の最高権力者である」なんて思ってはいけない。

 言いたいことがあったらオブラートに包まず言う。

 遠慮したり気を遣ったりするだけ無駄。

 チンピラの言っていることを真面目に受け取らない。

 これを意識していれば、チンピラのやり方や態度にいちいちムカつかずにいられる。

 慣れというものは恐ろしいもので、あれだけ相容れないと思っていたチンピラともなんとかやっていけている。

 今日チンピラが彼女に、最近入った新人のねずみ君があまりに仕事ができないため、仕事のできない後輩を指導した経験を持つ彼女に助言を求めてきたらしい。その辺彼女的にはどう?みたいな感じで。

 この辺が以前のチンピラと違うなと感じて意外って思った。

 以前なら彼女にわざわざこんな言い方をして助言を求めるようなことはしなかったと思う。

 チンピラがねずみ君のことで思った以上に悩んでいることの現れか。ねずみ君を中心に色々問題が起こっているから、さすがのチンピラもこれではいけないと思ったのかもしれない。

 ここで彼女に助言を求めたというところもポイントだと思う。

 彼女とチンピラは何度か意見をぶつけあい、といってもチンピラがおかしなことを言っているのを彼女が正すという感じで、有益な話し合いとは言い難いものであったのだが。彼女の論理が正しく、チンピラはそれを認めたくなくてその場しのぎの意見をぽんぽん出していき、話がそれるというのが通常の流れ。

 そんなやりとりを何度もしている中で、チンピラは彼女の意見の正しさ、考えの深さなんかを他の人たちよりも身にしみて実感したのかもしれない。チンピラは意見のやり取りの中で頭おかしいことは言うけど、結論を出さずに逃げたり、うやむやにして終わらせるということをしない。数少ない良い所かなあとは思う。

 チンピラに自覚があるかは分からないけど、彼女に言い負かされまくって、チンピラは彼女の偉大さを無意識に感じたのではないか。

 困ったなあ、彼女に相談してみよう!という流れはそうして生まれたのかもしれない。

 そして彼女は、冒頭で書いたように、チンピラに対して上司であるとか年上であるなんてことは一切気にせず、ねずみ君に対する教育の仕方を今の状況ではいけないから、こうしたら良いという方針を提示。ねずみ君のフォローに回って自分の仕事が終わらないとぼやくチンピラに、上司として部下のフォローで手一杯になってしまっている状態はチンピラ自身の能力不足であるという事実を突き付け、沈黙させた。

 この様子をはたから見れば彼女のほうが地位の高い人間に見えただろう。

 チンピラはこれを普段のばかみたいなノリではなく、わりと真摯に受け止めたようで、彼女の指導は成功したと思われる。

 チンピラの性格を加味し、彼が受け入れやすいように、時に彼のプライドを刺激し、時に彼の苦悩を思いやったフリをしてあげていたんだと思う。

 彼女のアプローチは大成功。

 これによってチンピラが心を入れ替えて翌日から見違えるようになるかといえばそうではないだろうけど、彼女の言葉がチンピラに影響を与えたことは確かだと思う。

 やはり彼女の介入によって、職場の質が向上するのだなと思った。

 おしまい。