かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

ノリ

 僕と彼女の間で通用する独特のノリっていうのがある。

 これは、今までの彼女との付き合いの中で培われたもので、きっと僕と彼女だからこそ生み出されるノリで、もし僕が他の誰かと同じようなノリで会話をしようとしてもうまくいかないだろう。

 例えば~の話が盛り上がってどんどん架空の設定が追加されていって、あたかも現実に存在することについて話しているような感じになることとか、かなり限定的人しか分からないであろうネタを引用して会話を盛り上げるとか、僕だからついていけるし、彼女だからついてきてくれるというノリ。

 二人で会話している時は周囲を気にしなくてもいいから好き放題、思いつくままに勢いだけでバンバン話ができる。ぽんぽん話題が出てきて、会話のキャッチボールがものすごくテンポよくできると、すごく楽しいし会話していて気持ちが良い。心の底から楽しいなあって思える。

 このノリにかろうじてついてこれるのが、Y君とチンピラかなというところ。彼らに対しても手加減というか、本来の僕たちの会話の調子は出していない状態ではあるけど、いい具合にノッてきてくれる。

 他の人達は、微笑ましく見てくれているか、ちょっと笑いながら少し離れたところで見ているか、という感じ。みんなやさしいので、こいつらのノリうぜえみたいな感じにはならない。

 もちろん、僕と彼女は周囲に気を配るから、周りを置いてけぼりにしないように気をつけているし、積極的に他の人も会話に組み込もうとしている。僕たちだけのノリで他者を突き放すことはない。

 最近職場にやってきた新しい人達は、僕と彼女の会話のノリだったり、チンピラやY君なんかも含めた会話のノリにも若干の戸惑いを浮かべているようだ。その辺は時間が経てば慣れてきて解決するんだろうけど、その姿を見て、やっぱりこのノリはそう安々と作り出せるものではないんだなと感じた。時間を掛けて築き上げた信頼関係とか、お互いの会話の間とか、定番の流れとか、そういうものがあってこそのものだなっていう。

 長く職場で一緒に働いている人たちとは、それなりにお互いのことが分かっているから、ノリの良い会話というのができる。その中でも彼女は特別。こう言えばこう返ってくるだろうとか、こういうのを期待しているなとか、なんとなく伝わる。彼女が会話をどう展開しようとしているかというのも感じ取れる。

 彼女とそういう会話をしていく中で、僕は積極的な方向に変化していったんじゃないかなって思う。

 今までそういうノリを少し離れたところから眺めるような人生だったのが、そのノリの中に飛び込んでいけるようになったんじゃないかなって。

 会話のノリについていけず戸惑う人を見ていると、昔の僕はこうだったなあって思う。彼女と出会う前の僕はこうだったなあって。

 彼女のおかげだ。

 そしてもう一つ、僕と彼女の会話が最高に盛り上がっている時は他の誰も入り込めないだろうなあって思う。それは僕にとって、彼女にとって、お互いが特別な存在だという証拠だなって思った。他の誰とも同じようには楽しめない。なんだかそれってすごく嬉しい。

 彼女にとって僕が特別だっていう事実は、僕にとってこれ以上ないくらいに素敵なことだ。

 これからも彼女と僕たちにしか伝わらない特別な会話をしたいなって思う。

 おわり。