かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

はんせい

 今日僕は早い時間から仕事で、彼女は遅い時間からの出勤だった。

 彼女が来るまでの間にお偉いさんが来ていて、職場には緊張感が漂っていた。彼女が来る頃にはお偉いさんは帰っていたものの、彼が残していった数々の仕事に対する指示は山のように積み重なっていた。

 僕とY君はそのお偉いさんが言い残していった仕事をさくさくと終えていき、休憩時間になる頃には半数以上を終えていた。ここまでは順調だった。

 彼女が出勤してきて、改めて仕事の分配をすることとなったのだが、その指示を出したのがくまもんだった。

 Y君には引き続き、お偉いさんが言い残した仕事の続きをやってもらうとして、とくまもんは言い、その後僕に必ず終わらせないといけない毎日の業務をやってもらおうかなと呟いたそうだ。それを彼女の目の前で言っておきながら、どこの仕事やりたい?って聞いてきたらしい。頭おかしい。そんなの彼女は残った仕事を私がやりますって言うしかない。彼女は理不尽さを感じながら、残った仕事をやることにした。残った仕事というのが、身動きの取れない場所固定の仕事で、自由に動き回れないし、その仕事に専念しなければいけないもの。

 彼女は持ち場を動けないながら、僕にくまもんが言っていたこと、加えて今後どう作業をすすめるのかという指示と、今日イレギュラーな仕事が残っていることを伝達してくれた。Y君にも同じように伝達してくれていた。

 Y君は仕事に追われてバタバタしているし、僕もちょうどその時バタバタしていたのと、くまもんの言動に対する苛立ちがあって、彼女が言ってくれていることに対する反応が十分ではなかった。

 彼女が感じたくまもんの発言に対する理不尽さの件、それと今日やらなければならないイレギュラーな仕事に関すること、どちらに対しても受け流すような返事になってしまったことで、自分の話をしっかり聞いてもらえていない、会話をする気がないという風な印象を彼女に与えてしまった。

 彼女にそれを指摘されて、また忙しくて余裕なくなってる?そういうのうんざりなんだけどと言われてしまった。

 僕は余裕がなくなると話をしっかり聞けなくなるという欠点を持っている。そのことで散々彼女に嫌な思いをさせたり怒らせたりしてしまっているので、最近僕は無理矢理にでも余裕を持とうと心がけている。自分としては、めちゃくちゃ気をつけているって思っている。

 前半戦はわりと順調だったものの、後半忙しくって明らかに時間的余裕がないのにやることが山積み状態。そこで余裕が無くならないように自分の心に注意を払っていた。そのおかげか、焦りを感じることもなく、余裕がなくなっているというわけではないなと自己分析した。

 でも彼女の話を聞いているという態度ではなかったのは事実で、じゃあそうなっちゃったのはなんでだろうって考えた。

 そこで僕はイライラしてるんだって気づいた。くまもんに対して。

 僕は彼女が嫌な思いをしなくていいように、嫌な職場だけどなるべく嫌だって思わなくても良いように、気を配っている。

 くまもんはそれを台無しにした。

 彼女じゃなくたって、目の前で、こうなったらいいなあって言われたあとに、どうする?って聞かれたら、すでにお前の中で決まってるんじゃねえかってなって、いい気分はしないはずだ。ましてや残された選択肢が、一番重要度の低い、誰にでもできることであればなおさらだ。お前は仕事ができないからそれをやれって言われているようにも感じるだろう。

 最初から、事情を説明されて今日はこの仕事をやってくださいって言われれば彼女だって多少やりたくないなあ的な思いは持ったとしても、そこまで嫌な気分にならずに仕事を始められたかもしれない。

 筋を通せばいいだけの話なのだ。

 そんな簡単なことがくまもんにはできない。相手を不快にさせるってどうかんがえたって分かるようなことが分からない。

 全くもって無能である。

 後の仕事の指示も僕には一切せずに彼女に全部任せてるし。

 彼女に嫌な思いをさせたことと、僕の努力を無駄にしやがったくまもんに対して僕はとっても苛立っていたのだった。

 苛立っていたのも、余裕がなくなっていたのも同じようなことで、どちらも良いことではないし、ましてや彼女の話を聞く姿勢ができていなかったことの言い訳になるわけもない。僕に苛立っているという自覚が不足していたのが問題だった。彼女に指摘されて、自分を客観的に見てやっとわかったことだった。

 そのことを彼女に伝えて、どんな理由であれ話を聞けてなかったことを謝って、なんとか許してもらえた。

 仕事は手一杯で、終了時間ギリギリでなんとか全部終わった。彼女が気を利かせて仕事をやっとこうかと声を掛けてくれたり、間に合わないようだったらこうしたらってアドバイスをくれたおかげでなんとかなった。

 自分の行いに関しては深く反省して、とにかく落ち着いて、集中して話を聞くとうことを心がけようと思う。焦らないことにばかり気を取られていたと思う。

 くまもんは本当につかえないので、彼の働きに期待することはもう二度とないだろう。なんの役にもたたない。無駄な仕事を見つけてきて増やすだけのくそ。

 口汚いことを言いつつ終わる。