かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

愚か者

 今日は彼女と遊んだ。

 まず、少しだけ早めに家を出て、コンビニへ寄った。

 寒かったから何か温かい飲み物を買いたいなって思ったからだ。自分と彼女の分を買って車に戻ると彼女から連絡が来たので迎えに行った。

 数日彼女に会えなかったので僕は彼女に会えるのが嬉しくてたまらなかった。何日か前から今日を楽しみに生きてきた。

 特に今日なにをするかというプランは練っていなかったんだけど、相談の結果、雑貨屋さんへ行くことになった。

 今日は祝日だしクリスマス前ということで、道やお店が結構混んでいた。

 目的地までに掛る時間も通常の1.5倍くらいという感覚だった。

 移動中は話が盛り上がったり、テレビを観たり、歌を歌ったり(僕が一人で盛り上がってた)しながら、楽しく過ごせた。

 彼女の体調があまり思わしくなくって、しっかり昼食をとる食欲もないということなので、あとで何か軽くつまめるものを買うことにした。

 雑貨屋さんに到着し、店内を見て回る。クリスマス系の雑貨は割引されてたり、プレゼントに良さそうな商品はババーンと売りだされていたりして、クリスマスと年末の雰囲気を同時に感じた。

 雑貨を見て回っていると、小分けになったお米が売られていて、各地のブランド米がそこそこお手軽な価格で手に入るようだった。テンションが上がった僕は家へのおみやげということで二つ購入することにした。彼女はいらないってことだったので、他になにか良い物がないか探したんだけど、これといってピンとくるものがなくってここでのお買い物はお米だけだった。

 せっかくなのでクリスマス用のラッピングをしてもらった。ちょっと浮かれた感じになった。

 併設されているカフェっぽいところでソフトクリームをテイクアウトし、車に戻って食べた。僕は牛乳ソフト、彼女は豆乳ソフト。ここの豆乳ソフトクリームはかなり美味しい。豆乳が別段好きではない僕でも美味しく食べられる素敵なものだ。

 食べ終わると近くにあるおおきめのドラッグストアへと向かった。飲み物とお菓子を調達するためだ。

 車から降りた彼女がいくぞー!って言って走りだしたのが可愛くて、それを小走りで後ろから追いかけながら、しばし堪能した。

 金欠気味なので、買い物は抑えよう!と言いつつ欲しいお菓子をばんばか買ってしまった。美味しいものに対する財布の紐の緩さ。

 美味しいお菓子と飲み物は調達できたので、しばらく休憩することにした。

 お菓子を食べながら、最近ハマっているゲームを二人でやった。彼女の方の手伝いをする機会があったんだけど、ミスが許されないため、慎重に時間を掛けて一生懸命やったら上手くいった。ものすごくホッとしたのと同時に今最高に彼女の役に立った!って思った。

 次はどうしようかという相談がなされ、彼女からはなにが欲しいというものはないけど、本屋さんへ行きたいという意見が出た。ならば僕の地元の方へ向かって、本屋さんへ行くとか、ドラッグストアへ行くとかでどうでしょうという提案が採用されて、地元方面へと向かった。夕飯はいまいち思いつかないため保留。何か思いつかないかぎりコンビニで済ませてしまうのもいいねって感じだった。

 この辺の話をもう少ししっかり詰めておいて、その後の時間配分を計画しておくべきだったと後悔することになるのはもう少し後の話。

 夕方の道が混む時間帯で、行きよりも更に時間が掛る移動。ちょっと前まで元気そうだった彼女がぐったりしてしまっていたので、座席を倒して横になって休んでいてもらうことにした。少しでも良くなることを願って。

 30分程通常よりも時間が掛かってしまいながら、本屋さんに到着。僕の地元には二つ本屋さんがあるんだけど、僕が選んだ本屋さんは彼女の思っていた方の本屋さんとは逆だったらしい。最近こちらの本屋さん行ってないなーって思ったのと、前に逆の本屋さんへ行った時に、こっちかーって彼女が言ってたような記憶があったので、こちらを選択したのだが失敗してしまった。どっちに行くっていうのも勝手に決めないで事前に話をしておけばよかったなあ。

 もう一箇所は後で行くでもいいか、ということで本屋さんに入る。

 小説やら漫画やらを見て回るものの、彼女が気に入って欲しい!と思うような本に出会えない。あまり粘って時間が経ってしまうのもよくないというのと、僕がトイレに行きたくてたまらないというのとで、ここの本屋さんは切り上げて、もう一つの本屋さんへ向かうことにした。

 本屋さんの近くには大きなスーパーがあって、そこのトイレは広くて落ち着くので、軽く買い物するがてらトイレを借りることにした。

 すると、店内で「お寿司が全品半額です~!」って店員さんが言ってるのが聞こえた。そこで僕のお寿司食べたい熱が急激に上がった。彼女を呼んで、一緒にお寿司を見て、今日はお寿司にしよう!と半額のお寿司を手にとった。

 売れちゃうと困るので彼女にお寿司をキープしといてもらって、トイレへ。すっきりしたので、ついでにサラダを買って、あと彼女が黒豆茶というのが飲みたいということでそのパックを買って、あとあんこ玉も買った。

 車に戻ってサラダとお寿司をいただく。車内でお寿司を食べるのはちょっと難易度が高かった。テーブルが欲しい。でもとっても美味しくて大満足だった。

 この時点で僕は気にしなければいけないことと、思い出さなければいけないことがあったのだが、お寿司でテンションがあがって浮かれていた僕はそんなこと全く考えずに本屋さんへと向かった。

 しかしこの本屋さんでも彼女が欲しいと思うような本が見つからなかった。ぐるぐると店内をめぐっていると、徐々に彼女の元気がなくなっていくのが手に取るようにわかった。素敵な本を見つけてこれどう?って言いたいけど見つからず、彼女を元気づける術も見つからず、時間が過ぎ、疲労が蓄積されていった。

 結局ここでも何かを買うことは諦めて、車に戻った。

 しかたないので、残りの時間はゆっくり過ごそうと僕は思っていたのだけれど、ここで彼女が大事なことを思い出した。そう、僕が気にしなくてはいけなかったことと、思い出さなければいけなかったこと。

 時間と、ドラッグストアへ行くという予定。

 本屋さんを出た時点で行こうと思っていたドラッグストアは閉店している時間。彼女はドラッグストアに行くつもりだったのだけれど、僕と同じように今まで忘れてしまっていた。僕と彼女の両方が忘れてしまっていたんだけど、僕には今日の予定を立てて時間を配分する責任がある。それを忘れてしまってはいけなかったのだ。

 なにも買えなかったというショックと、ドラッグストアに行くつもりだったのにもう行けないというショックとで彼女はかなり落ち込んでしまった。完全に僕のせいだった。素敵な本を提供することもできず、彼女を疲れさせてしまっただけになってしまったことを反省してヘコんでいた僕は更にそのことで大ダメージを食らった。

 なんとか彼女が立ち直ろうと代案として別のドラッグストア(こちらの閉店は一時間遅い)へ行くのは?と言ってくれたのだが、そこへも移動時間の関係で到着は閉店5分前とかになってしまうという事実。僕の心にもかなりのダメージがあったんだけど、彼女にはそれがトドメの一撃になってしまった。

 心身ともに疲弊した彼女は、もう帰るって言った。

 その言葉が僕の胸に突き刺さって、一瞬動けなくなった。どうあがいたってもうドラッグストアにはいけない。ドラッグストアに変わるお店だってない。手詰まり。今、目の前でものすごく落ち込んで言葉も発することもできないような彼女を、そこから救い出す術が全く思い浮かばなくなってしまった。

 車を彼女の家に向かって走らせる。

 このまま彼女と別れてしまうのは嫌だった。こんな状態で別れたら、お互いに嫌な気持ちが残ったままになってしまう気がした。なんとか、少しでも気分転換してから別れたかった。

 別の場所を提案するも、行かないと言われてしまい、僕の頭は一生懸命思考するんだけど、なにも思いつかなくて真っ白だった。

 本当にこの道を曲がればお別れというところまできて、僕はこのまま別れたくないと彼女に言った。疲れきった彼女に、僕のわがままをぶつけることは、やってはいけないことに思えた。彼女に更に苦痛を強いることになってしまうだろうと思ってものすごく怖かった。

 彼女は帰るとは言わなかった。もう少し僕といてくれる、そのことで少しだけ僕の心に希望が宿った。

 でも僕がした失敗、今まさに隣でぐったりしている彼女の状態、それを考えれば浮かれることもできず、ただ遅くまでやっている本屋さんへと車を走らせた。

 そこで、やっと本を買うことができて、少しだけ、本当に少しだけ気分転換ができて、彼女を家まで送った。

 彼女は、疲れていて、調子もよくないけど、僕のために頑張って今日遊んでくれたこと、遊んでいる最中も頑張って元気に振る舞ってくれたことを話してくれた。

 別に感謝してほしいわけじゃないと彼女は言っていたけど、僕のために無理をさせてしまって申し訳なかったと思ったし、ありがとうって思った。僕はばかみたいに、彼女と遊べるわーい!って盛り上がって、彼女がどれだけ苦しいか、どれだけ無理しているかというのをしっかり見れていなかったんだろうと思う。もちろん彼女の体調は気にしていたし、元気が無いのも心配だったんだけど、足りなかったんだろうなって思う。

 その配慮が足りなかったことで、今回の出来事を引き起こしてしまったと言えるんじゃないかなと思う。

 もっとたくさんごめんねって言いたかった。僕のせいで苦しい思いをさせてしまって。

 でもごめんねって言われても、彼女もいい気分はしないかなって思ったから、ありがとうって言おうと思った。僕は彼女と一緒にいられて嬉しかった。今日一日彼女と過ごせて楽しかった。幸せだった。彼女が元気なくても、元気いっぱいでも、どんな状態でもいい。彼女といられればそれでいい。そばにいられれば幸せだから。

 今日も一日ありがとう。