かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

堕落の座敷わらし

 最近、座敷わらしが調子に乗っているという話が僕らの間に流れていた。最近でもないか、ここ一年くらい。

 調子に乗っているというと正確な表現ではないかもしれない。

 もう少し詳しく書くと、注意したことを聞かない。聞いていても同じ失敗をする。反省した素振りを見せてへこんでもすぐ忘れたように元気になる。こんなことはしょっちゅうで、枚挙にいとまがない。

 加えてものすごく空気が読めないので、こちらが話しかけて欲しくないオーラを出していてもグイグイ来る。ついてこなくてもいい時に後ろをちょこちょこついてきたり、別々の作業をしているのにこちらにやってきて茶々を入れてきたり。

 今日も、進めておかなくてはいけない仕事を任されていたのだが、集中できないのか身が入らないのか、やらなくてもいいと思っているのか、全く進めていなかったようだ。再三やってねと彼女が注意したにもかかわらず、それでもやっていなかったため、彼女が少し時間を割いて叱ったらしい。

 座敷わらしをあまり傷つけまいと優しく注意で止めようとすると、全く伝わらないため改善が見込めない。それでも注意して気づいてもらえたほうが良いに決まっているので、彼女も最初は注意をするにとどめたんだけど、結局改善されないから叱ることとなった。

 時間があったのにこれが全くできていない。後輩もいて、自分が周りにも注意をしないといけない立場なのに、その本人が一番仕事してないってどういうこと、という話をしたみたい。

 これをわざわざ言わなければいけない彼女の心中を察すると、非常につらい気持ちになる。こんなこと言わないに越したことはないのだ。言う前に自ら気づいて直してくれれば、彼女がこんな役目を担う必要はないのに。

 そんなことがあったが無事仕事は終わった。しかし直後事件は起きた。

 今日、座敷わらしが起こした第二の面倒事である。

 これも少し前から、座敷わらしは僕とY君に対して、ちょっと舐めたような態度を取るようになっていた。意味もなく口ごたえしてきたり、うざい絡み方してきたり、そして極めつけが、どーん(体当たり)である。

 僕もY君もその座敷わらしの態度にかなりイライラきていて時折お互いに愚痴っていた。

 少し前に、彼女がその事実を知り、座敷わらしに注意してくれた。どーんってするのはよくないよって。

 それが効いたのか、僕にはそれからどーんってしてこなくなった。たまたまタイミングがなかっただけかもしれないけれど。

 しかしY君に対してはまだまだ続いていたようで、タバコに火をつけようとしているタイミングで後ろからどーんってしたなんてこともあった。その時も彼女が結構本気で注意したみたい。危ないからね。

 そして今日、またY君にどーんってしたらしくって、これまたよく分からないタイミングでのどーんだったらしい。

 このままこの状況を放置しておくのは、Y君にとっても座敷わらしにとってもよくない。知らない間にY君に嫌な思いをさせている座敷わらしと、座敷わらしに対する苛立ちを必死に我慢しているY君。

 Y君の堪忍袋の緒が切れて、直接座敷わらしに気持ちを伝えてしまうとなると、それは二人の関係の終焉を意味する。

 彼女はそこまで考えて、座敷わらしに再び注意をすることにした。

 先ほどの仕事の進み具合と同じで、優しく注意しただけでは伝わらない。きちんと伝わるように具体的に、それで相手が傷つくことも分かっているが、それでも注意しなくてはいけない状況だった。

 それ(体当たり)が嫌がられていて、嫌われかけていると。

 それを彼女から逃げるように歩きながら聞いていた座敷わらしは、その後トイレに閉じこもったらしい。結局みんなが帰る頃には出てきたらしいんだけど、その後Y君への謝罪の言葉はなかったらしい。

 彼女が反省したのかなと心配していたが、僕は願望も込みで反省したんじゃないかなあと思っている。

 彼女が注意しようとしたときにやってないですと言い訳していたらしく、言い訳をするということは悪いことをしたという意識があることの裏返しである。

 そして彼女の注意から逃げるように歩いて行ったというのも、自分がやらかしたという自覚があるからこそである。

 加えて、座敷わらしは彼女に対して口ごたえはしないまでも、言い分があれば不満そうな顔で何か言いたそうな態度をとることが多い。しかし今日はそれもなかった。ということは、全面的に自分が悪いというのを認めたと取れる。

 実は仕事中、座敷わらし個人に降りかかった災難があり、それに対して憤慨していたらしい。その件によって精神的に疲弊していたこともあり、トイレに閉じこもり、外部からの刺激から逃げたと思われる。

 Y君への謝罪がなかった件は、座敷わらしの精神的余裕のなさと、圧倒的な空気読めなさっぷりの両方が原因ではないかなと思う。

 謝罪はないものの、反省はしてるんじゃないかな、と思うのだ。

 そんな盛り沢山な一日を終え、彼女は疲労困憊で帰宅した。

 唯一の救いは、座敷わらしを叱った彼女に対して、Y君が「すいません自分でやらなきゃいけないのに」と言ってくれたことだろう。

 彼女が考えたように、この件を当事者同士だけで決着をつけようとすると、修復不可能な状態になってしまう可能性が高く、今回は彼女が適任であったと思うのだが、それでもY君が自分の問題を代わりに伝えてくれた彼女に対して自分がやらなきゃいけないと思ってくれたことは良かった。

 彼女がどういうつもりで言ったかを理解して感謝してくれたってことだからね。

 座敷わらしには、彼女の苦労を無駄にしないように、しっかり反省して己の行動を改めて欲しい。そうなってくれればいいのだけど、それがあまり期待できない相手ではあるのが悩みの種だ。

 仕事の件に関しても、どーんの件に関しても、彼女の働きは適切で素晴らしいものだったと思う。

 おつかれさま。