コーンの共通点
食卓にコーンが出てくると、彼女とコーンが嫌いっていう話で意気投合したことを毎回思い出す。
彼女も僕もコーンが食べられないわけでも味が嫌いなわけでもなくて、ただスープに浮かんでいるコーンを拾うのが面倒くさいというものぐさな理由で嫌いだった。
世の中にはそういう人も一定数いるんだろうけど、たまたまコーンの話を始めて、二人とも嫌いだって言って、理由まで一緒だったっていうのが僕には奇跡のように感じられて嬉しかったのをよく覚えている。
僕は彼女とのこういう些細な共通点っていうのが好きだ。
二人とも犬が好きとか、カレーが好きとか、大きなくくりでの共通点っていうのはたくさんあるし、そういうのは彼女相手ではなくても共通点として見出すのは簡単なことだ。
でもコーンの嫌いな理由とか、ごく一部分でしか発表されていない知ってる人あんまりいないんじゃないかなっていうお笑いのネタが好きなのとか、そういうちょっとしたエピソードまでもが共通している相手というのはそうそういないと思う。
合わせようと思って合う部分じゃないし、感性が似ているとかでは片づけられないくらいの共通点。運命のようなものを信じたくなってしまう。
好きな音楽が似てるなあとか、好きな漫画が似てるなあとか、そういう人は今までに何人かいたけど、彼女のような共通点がある人は初めてだった。
出会った頃は僕が共通点探しに必死で、彼女と僕が似ていると思い込みたくて仕方なかった。似ている部分が多くて共通点がたくさんあるほうが、彼女と仲良くなっているような気がしたし、僕のことをもっと好きになってくれると思っていたから。
でも今になって考えてみれば、そこに固執しても何も得られないなって思う。
共通点や似ているところがあるのは嬉しい。でも、だからといって、僕が彼女にとって必要な存在になるための重要なポイントかといったらそうではない。
むしろ違う部分があるほうがいいんじゃないのって思う。
好き嫌いが違うのなんて当たり前なんだし。
決定的な部分が違ったらだめなんだろうけどさ。
だからこれからは彼女と違う部分を見つけていこうと思う。こんなところは制反対なんだってわかったら面白いかもしれない。
それがたくさん集まったら、ここでお知らせしようと思う。