かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

ふんだりけったり

 先日、久しぶりに彼女が号泣している場面に遭遇した。

 その日の彼女は最高にツイてなくて、多方面から袋叩きにされたような精神状態だった。叩かれて、倒れて、一生懸命立ち上がったらまた叩かれて、というような感じだった。

 仕事中の出来事ではあったんだけど、僕は彼女が心配で心配でたまらなかったので、彼女のそばにいられるよう、勝手にさぼっていた。

 あとで彼女本人が言っていたけど、こんなに泣いたのは久々だったらしい。確かに、最近見てなかったかもしれない。

 基本的には彼女とくまもんが話をしていたんだけど、僕もだまってそこにいた。

 どうしてもやらなきゃいけない仕事でその場を離れて、戻ってくると彼女が泣いていて、再びそこを離れて戻ってきたら泣き止んでいて、安心して、そしてまたその場を離れて戻ってくると号泣している。

 僕はどうしてこうなっているのかという状況を掴めないまま彼女を見守ることしかできなかった。

 彼女一人でいるんなら、いろいろやりようがあるんだけど、そもそも僕以外の人がいて、彼女がいて、という状態だったのであまり自由に動けないのがもどかしかった。

 二回目に彼女が泣いてしまっていたときは思わず、彼女のハンカチを奪って涙を拭いた。

 彼女に何かしてあげられないと自分が落ち着けなくてどうにかなってしまいそうだった。

 僕はもう彼女が心配で心配で、何か少しでも間違った方向に進んでしまえば、僕にとっても彼女にとっても取り返しのつかないことになってしまうんじゃないと、不安で心が苦しかった。

 この時はかなり必死だったんだけど、やっぱり泣いている彼女は素敵だなと感じていた。それを考えるだけの余裕はあった。

 普段言わないで我慢していること、口に出すことはないけど毎日思っていること、不安や心配なこと、それを涙を流しながら彼女は話してくれた。

 抱きしめたくなるような弱々しさを感じ、どうにかしてこんな状況から彼女を救い出してあげなくちゃっていう使命感にかられた。

 僕が守ってあげなくちゃって感じているときというのは、彼女にすごく魅力を感じているときのようだ。

 泣いているときはすごく心が弱っているから、様々な理由で言わないようにしていることがぽろっと口から出てしまう。弱音みたいなものがね。

 彼女は普段そういうことを僕以外の人にほとんど言わないし、僕にだって言わないような弱音もあると思う。

 泣いているときの彼女からは少しそういうことが聞けて、しっかりしていて頑張り屋さんな彼女とは違う一面を見ることができる。

 しばらく僕とくまもんと彼女の三人で話をして、ひと段落ついた。

 彼女が泣いているとひどく心が痛むんだけど、ひと段落ついた後に振り返ると、そんな彼女を見ることができてよかったなと思う。

 見たくないけど見たい、そんな彼女の涙。