かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

グラノーラ

 今日は彼女と遊んだ。

 ちょっと気合をいれたお出かけ。どうしてかというと、鉄人さんに誕生日プレゼントを渡し、一緒にご飯を食べるため、いつもの三倍くらいの移動距離を予定していたからである。

 いつもより少し早めに起きて、支度をして、彼女を迎えに行った。

 いつもは遠いから行かないショッピングモールまで行ってプレゼントを選び、その後鉄人さんと合流する計画。

 移動時間が長いので、彼女にはDVDを用意してもらって道中流しながら進む。当然僕は観れないけど、音声だけ聴いてても結構楽しいものだ。

 コンビニで食料を買い込み、走り慣れた道からあまり慣れていないところへと向かう。

 天気が悪かったけど、移動が多いから逆に良かったかなあと思いつつ車を走らせた。色んなお店を周るとかだと降りたり乗ったりで濡れるからね。

 今日の彼女はいつもより口紅の色が明るくて、綺麗な顔に目を引きつける鮮やかな赤が映えて、とっても美しかった。いつも彼女を褒める時は可愛いねって言いたくなるんだけど、今日はきれいだねって言いたくなった。言ったら気持ち悪がられた。もっとかっこよくスマートに褒められればいいんだけど、どうしてもでへでへしちゃう。彼女をきゅんとさせたいのに。

 ショッピングモール内の駐車場に無事到着。雨に濡れることもなく店内へ。

 彼女が探したいって言っていたものもあったんけど、まずは鉄人さんへのプレゼントを探そうということで、一階から順番に各階を見て回った。マグカップとかお箸とか、いくつか候補を見つけたものの決定打にはならず、そのままぐるぐるとお店を巡る。

 実は前回、鉄人さんに誕生日プレゼントを用意した時もこのショッピングモールに来ていて、各階をくまなく見て回った結果最終的に、去年プレゼントを買ったお店に辿り着いた。

 ここにいけばきっと何かあるはずという期待と安心感が僕たちの間に流れていた。

 虫よけバンド、おしゃれネクタイ、と手にとってこれはいいかもしれない!という候補を見つけた後、彼女の欲しかった物を探す方に夢中になって一瞬、鉄人さんへのプレゼント選びを忘れた。

 彼女との買い物が楽しくて、彼女が欲しい物を一緒に探しているとテンションが上がってくるので、一番重要な目的を見失ってしまった。彼女が欲しかったものが無事買えて、プラスでとっても可愛いシールを見つけたりして満足。気を取り直してプレゼント選びを再開する。

 ふと、コップの縁に引っ掛ける系フィギュアの中で、ハムスターが引っかかっているやつを見つけた。これは可愛い!とテンションがあがる。ガチャガチャでもハムスターのものを見つけるとついやりたくなる僕たち。好きなものにハムスター入れていいなこれは。

 数種類の中でどれが入ってるか分かりませんよー!っていうものだったんだけど、僕がその中から適当に一つ選びだし、それをプレゼントのおまけにしようということになった。メインが決まってないのにおまけが決まるってちょっとおもしろい。僕たちのお買い物風景って感じがする。

 夏物コーナーみたいなのがあって、そこに扇子があるのを見つけた。鉄人さんに扇子はとっても似合う!ということで、プレゼントのメインは扇子に決定し、柄を選んだ。

 彼女はプレゼントを選ぶときに、自分の好みも反映させるけど基本的には相手の好みと相手に合うかどうかで選ぶ。僕はついつい自分の好みで選んで、その後ちょっと冷静になって合うかなあ合わないかなあって悩むので、彼女のほうがプレゼントを選ぶのは上手。でも彼女はちゃんと僕の意見も聞いて、それを踏まえた結論を出してくれた。最初に決めた扇子の在庫がないとか、色違いの見本がないとかいうちょっとしたアクシデントはあったものの、無事プレゼントを購入完了。

 集合予定時刻にはまだ時間があるということで、モール内の書店に立ち寄り本をしばらく眺める。近所の書店には置いていなかった彼女が欲しがっていた本が見つかり、いい手応えだった。

 その後、これまたモール内のカフェで休憩することにした。時間に余裕を持って行動すると、こうやってゆっくりする時間が取れていいね。

 かなりおしゃれなところで、おしゃれさだけに気を遣って、接客とか中身(飲み物や料理の質)を蔑ろにしているという勝手な妄想をしていたんだけど、出てきたアップルパイがめちゃくちゃ美味しくて、愚かな考えだったと悔い改めた。

 彼女とここが近所にあったらお客さんが入るか微妙だよねーという結構失礼な上から目線の会話をしていたんだけど、食べた後に、これは流行る!来ちゃうわ!って言いながら反省した。

 さてここで僕たちは楽しくお茶してたんだけど、終盤で僕が彼女に対して配慮に欠けた、彼女からすると侮辱されたと感じるようなことを言ってしまって、一気に空気が凍りついた。彼女は僕が嫌な思いをさせようと思って言ったわけではないということは分かってくれていたけど、それをかみしても僕の発言は許せないものだったよう。軽率な発言だったと反省して、謝って許してもらえたんだけど、その時に精神的に追い詰められて体調に何かしらの影響が及んだのか、鼻の頭というか全体から尋常じゃないアブラがでてた。彼女が僕の鼻を見て、すごいことになってる!って言い出して、どうしたんだろうって思って鼻を触ってみたら、ぬるっとして指がべっとべとになった。汚い話でごめんなさい。多少鼻があぶらぎってテカることはあったけど、こんなになったのは初めてじゃないかと思う。あぶらとり紙二枚使ったからね。精神的に追い詰められたこととの因果関係は不明だけど、直後だったのでもしかしたら関係あるのかもね!やばいってなったときに脂汗かくっていうしさ。その後ずっと鼻を気にしてたけど、この時のようなアブラは出てなかった。

 ショッピングモールでの買い物を終え、鉄人さんと合流予定地付近にある古本屋さんに行って時間の調節をしようという提案が可決され、再び車を走らせる。降り続いていた雨は更に強くなっていて、結構強くなってるねーなんてのんきな会話をしながら目的地に到着。ここでは掘り出し物の漫画を見つけて、収穫あり。

 そろそろ時間だろうってことでお店を出ると、強かった雨が更に強くなっていて、滝のようだった。急いで車に戻ったけどびしょびしょになってしまった。彼女の髪を拭いてあげて幸せを感じながら、待ち合わせ場所に向かった。

 彼女が約束していた時間にピッタリじゃない?って言うので時計を見てみるとまさにちょうどその時間だった。ほんとだー!とはしゃいだあと、二人で同時に「時間に正確」って言った。正確には覚えてないんだけど確かこんな台詞だった。で、発言が被ったので僕はやったー!気持ちが通じあってるー!ってすごく嬉しくなったんだけど、彼女にそれを見抜かれて「今やったーってなってるでしょ」って言われてしまった。その通りです。

 仕事を終えた鉄人さんと合流して、ご飯を食べるぞー!と和食屋さんへ行った。僕がお世話になってたまに遊んでもらっている、鉄人さんとも大の仲良しの人見知りさんがいるんだけど、この食事会に人見知りさんも呼ぶ?って鉄人さんが言い出した。彼女は僕が人見知りさんのことをかなり好きってことを分かってくれているので、僕のために呼んであげなって鉄人さんに言ってくれた。彼女的に人見知りさんが増えるとどちらかといえば気を遣うことになるので、呼ぶことに大賛成ってわけではなかったかもしれないかなと思って、彼女の優しさにすごく感謝した。

 人見知りさんに会うのがものすごく久しぶりというのと、また遊びましょう!連絡しますー!って言っておいて半年以上連絡をしなかったという失態によって、僕はちょっと緊張していた。もともとコミュニケーションが上手じゃないのに緊張していることによって最初全然喋れなくて、彼女が隣で優しく僕に喋りなよと言ってくれて、このままじゃいけないって思って意識的に喋ろうと頑張ることができた。

 ご飯は美味しかったし、会話も盛り上がってすごく楽しかった。チンピラの愚痴を彼女にばかり言わせてしまって申し訳なかったかな。僕も補足したり追加でなにか言ったほうがいいなって思うんだけど、どうしても邪魔になったり彼女の話したいことからどんどん逸れていってしまったりしそうで、あまり口を挟めなかった。でも彼女は自分が愚痴ばっかり言っていることで自己嫌悪に陥ってしまうので、僕もチンピラの愚痴を言ってそれを軽減させなきゃって思った。彼女の話の完成度が高いし、そこに参加していくのは難しかったけど意識してやればできないことじゃない。あんまり上手にはできなかったかもしれないけど、彼女にばかり話をさせたらいけないっていうのはずっと思いながら会話していた。

 彼女が誰かに対して話をしていると、その場にいる僕が聞く側の立場になってしまって、彼女が一生懸命話しているのに僕はどこか冷めた目でそれを見ているというように感じるらしい。言われて初めて気づいた。僕が口を挟まないのは彼女が言っていることが正しいからで、そのとおりだなあと思っているからなんだけど、そう思っているんだったら口に出さなきゃその場の会話に参加したことにならないんだって彼女に教えてもらった。言われると確かにそうだなあって思う。

 そんな感じで言われたことを実践しようと努力してみた。今まで無意識でやってしまっていたことを意識して変えていくことで、自分が変わったらいいなあと思う。彼女に嫌な思いをさせないためにも。そういうところちゃんとできるの素敵って思ってもらうためにも。

 ご飯を食べおわり、会話も一段落ついたので解散しますかという流れになった時に、彼女が「人見知りさんに連絡しなくてすいませんって言いな」って僕の背中を押してくれた。半年以上連絡しなかったことを謝ろう謝ろうって思っていたんだけど、タイミングを見つけられずにうじうじしていた僕を彼女はちゃんと見抜いていた。こういうところもダメなんだよね。ヘタレなんだよね。本当にこういう自分が嫌だなあ。

 彼女が背中を押してくれたお陰でちゃんと謝れて、また遊びましょう!って言えた。やってみれば簡単な事で、いつ言ったって成功したはずのことなんだけど、どうしても僕は一歩がなかなか踏み出せない。彼女のお世話になってしまった。

 それから僕たちはホームタウンに向かって帰路についたんだけど、雨が今までで一番降っていた。視界が確保されないレベル。ワイパーを過去にないほどに早く動かして、ハンドルをがっしり握り、緊張感を漂わせながら運転した。彼女をなるべく怖がらせないようにというのと、彼女の命を預かっているという責任感を持って集中を切らさないように頑張った。免許を取って10年くらいになるけど、今日のこの時が一番怖かった。

 ホームタウンに近づくにつれて雨が弱まり、見知った道にやってきた安心感も相まって非常に余裕が出た。

 いつも行くレンタルショップに立ち寄って気になっていたDVDを借りて、彼女としばらく一緒にいられる時間を楽しんでから、帰宅した。

 距離的にはそこまでじゃないけど、やっぱり豪雨の中の運転で疲れた。でもお出かけ楽しい。彼女とお出かけできるのはとっても幸せなこと。今日が楽しかったからか、家に帰ってきて久々に彼女に会いたいーって寂しい気持ちになっている。もっとたくさん一緒にいられたらいいのにと思わずにはいられない。

 目的はきちんと達成できて、計画通りに全てが進んで、それ以外の収穫もあって、とても良い一日でした!