かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

冒険

 今日はお休み。

 目覚めた時に仕事だと思って、すごく憂鬱な気分になりながら起きだしたんだけど直後休みだと気づいてホッとした。

 今日の彼女はお仕事があって、その後サークルの作品発表会兼パーティーがあるという予定が詰まった一日だった。今更だけどサークルっていうと大学生みたいだね。まあいいや。

 彼女が仕事に行く前、今日は髪型を変えてお団子にしたって言ってた。頭の上じゃなくって下の方で。僕は頭の上のお団子ヘアー好きなんだけど、一般的にはそんなに人気があるわけじゃないみたい?よく分からないけど。で、とにかく僕はお団子ヘアーが好きで、彼女がそうしたって聞いたらどんな感じか気になってしまうわけで。

 ちょっと出かけるついでに彼女の髪型を見に行くことにした。ううん、違う。彼女の髪型を見に行くついでに出かけることにした。

 仕事をしている彼女を遠目に見るの好き。僕がいることに気づかないでいるとき。僕の知らない彼女を見ているような、ちょっと得をしたような気分になる。

 お団子ヘアは可愛かった。くるってまとめてあるのやっぱり好き。一つで結んでいるのよりスッキリして見える。日によってとか気分によって変えるのも良さそうだなって思った。似合ってて素敵だった!

 さて、ここで僕は一旦家に帰り、パーティーへと参加する心の準備をはじめた。

 そう、僕はサークルに所属しているわけでもないのに今回のパーティーへの参加を許されたのだ。楽しそう!って思って、いきたい!って言ったらすんなりOKが出た。

 ほとんどがサークルのメンバーで占められるパーティー。僕が行ったら場違いじゃないのかという不安とか、居場所あるかなあっていう不安とか、単純に人とうまく話せるかなあっていう不安とか、とにかく不安でドキドキしていた。

 彼女が関わった作品を見ることができる機会だし、自分が知らないコミュニティに飛び込んでみるっていう、今までしてこなかった経験をするのも良いだろうって思って、勇気を出して参加することにした。快諾してもらえたことだしね。

 とはいえ、ドキドキするので一時間前くらいから何も手につかなくなって、そわそわしてた。

 彼女がいてくれるから安心っていう気持ちはだいぶあった。僕がいろんな事に積極的になれるのも、今回パーティーに参加してみようって思えたのも、全て彼女のお陰だ。全く知らないところに投げ出されても彼女がいてくれたらなんとかなる。

 そわそわおどおどしながら会場にたどり着くと彼女が出迎えてくれた。超安心した。

 他にも彼女経由で知っている人は何人かいて、それも僕を安心させてくれた。

 サークルの皆さんは、僕の存在をすんなり受け入れてくれて、時間が経つにつれ、自分がここにいる違和感みたいなものがどんどん薄れていった。

 本当は彼女の後にずーっとついてまわりたいんだけど、彼女は僕の保護者じゃないし、常に僕を気にしてなきゃいけない状態じゃ楽しめないだろうしってことで、自分なりに彼女に頼らずとも楽しめるように頑張った。

 意外といけるなって気づいた僕は、もしかしたら自分の社交性が向上しているんじゃないかと嬉しくなった。

 でもやっぱり彼女の隣にいるのが一番安心するし、楽しかった。彼女が気にかけてくれると嬉しい。

 彼女が所属するコミュニティ。外側から見ることはあったけど、自分がその中に飛び込んで内側から見ることになるとは思っていなかった。

 僕の知らない人たちから名前を呼ばれ、親しまれている彼女。僕の知っている彼女で、いつもと変わりなくて、ただまわりにいる人たちが違うだけ、そんな感じだった。不思議な感じ。知っていると知らないが混ざり合っている感じ。彼女の話に登場する人物が実際に目の前にいて、イメージと実像が繋がっていく。それが楽しかった。思っていた通りだとか、ちょっとイメージと違ったなみたいな。

 彼女はやっぱり気を配っていて、でもそれを感じさせなくて、多分周りは彼女が気遣いまくっていることに気づかないことが多いんだろうなって思った。気を遣って話し掛けにいっているのも、それを感じさせないで自然に話し掛けているし、そこでちゃんと楽しい会話を繰り広げられる。

 楽しんではいるんだろうけど、どこかに冷静な彼女がいて、常にバランスを取ろうとしてしまう。場のホットさが色で示されているとしたら、あそこの色が薄いから盛り上げに行こう、みたいな。今日は僕がいたから、僕のそばにいようって意識的に多めにいてくれたとは思うけど、きっと普段はもっと色んな所に顔を出してバランスをとってるんじゃないかなって思う。

 それができるのは素晴らしいことで、みんなは気づかない内にそれを享受している。でも彼女自身は自分のことだけを考えて自分が最高に楽しめるようにっていうことを追求できない。だから楽しいって感じていてもどこか乗り切れない、ふっと冷静になってしまう時があるんだと思う。

 きっと彼女はそれによって疎外感を感じている。常にではないけど、ふとした瞬間にそれに襲われる。

 こういう場において、冷静な視点を持っていられる人っていうのはすごく大事で、みんながみんな楽しい楽しい!ってなってたら崩壊する。

 だから彼女の存在っていうのはすごく大事なんだけど、周りがそれに気づいてあげないと、彼女はさっき言ったように疎外感を感じてしまう。気遣いに気づいて、ありがとうって言ってもらえたらきっと彼女はそれまでどんなにしんどくてもつらくても、頑張ってよかったって思えるんだと思う。

 それはまた同時に冷静な視点を持った人がいないと難しいのかもしれないけどね。

 今日は彼女がこの日のために作ってきたケーキが好評で、大絶賛されていたので、前日の頑張りが報われた。ケーキが褒められて喜ぶ彼女の隣で、一緒にでへでへ喜んじゃって、違う!僕が喜んでるのはおかしいよ!ってなった。でも彼女のやったことがみんなに褒められているっていうのは本当に嬉しい。自分が褒められるのより嬉しいと思う。

 場所やメンバーが違っても、彼女は彼女のまま、僕の大好きな彼女だった。

 不安でいっぱいだったけど、飛び込んでみれば案外やっていけるもので、楽しく過ごすことができた。

 良い一日でした。