かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

お誕生日~準備編~

 今日は彼女と遊んだ。

 明日は彼女の誕生日。だから今日は彼女の誕生日をお祝いする日として、前から計画していた。

 順を追って準備の話から今日一日の話までを振り返っていこう。

 まず、彼女の誕生日プレゼントを用意しようと思ったのは今月に入ってから。何をあげるのかはもうずっと前から決まっていた。

 それはお財布。

 彼女は今使っているお財布がとっても気に入っていて、それはとあるブランドのお財布なんだけど、そこの新しいデザインのお財布が欲しいって言っていたことがあった。新しくするとしたらここのお財布をまた買いたい、このデザインがすごく好きって。それがもう二年ほど前の話。その話を聞いた時、いつかプレゼントできたらいいなって思った。その気持を忘れることなく今まできて、やっと今回プレゼントしようって決心した。今までクリスマスとか去年の誕生日とか、あげる機会はあったんだけど、その都度何か僕の中でこのタイミングじゃないなって思うところがあってあげる決意ができずにいた。気軽にあげるプレゼントにしては高すぎるとか、今もらって喜んでくれるだろうかとか。高すぎるってのは金額が高いのが嫌なわけではなくて、貰った彼女がこんな高いものくれたのって引いちゃうのが怖かったってことね。

 決心したのはいいんだけど、彼女が欲しいって言っていた時から二年経過した今、まだ彼女はこのお財布を素敵だと思っていて、欲しいと思っているのかっていうのがすごく心配だった。

 以前は素敵だと思っていたけど今はそんなに欲しいと思ってない、なんて状態だったらどうしようと。同時に、僕なんかがこんな毎日使う重要な身の回りのものをどーんとプレゼントして迷惑じゃないかっていうことも心配だった。

 プレゼントされた以上使わなきゃなーって思われるのも嫌だったし、僕からこれをもらってしまって困るなあって思われるのも嫌だった。

 だから本当にこれをプレゼントしていいのかとしばらく悩んだ。

 悩んだ結果、もし彼女がそんなに欲しくないって思ったとしたら、使わないでしまっておいてくれればいいし、迷惑だったとしても使わないでしまっておいてくれればいいって思った。とにかく僕は彼女にこのお財布をあげたいと強く思っていたので、その気持ちに従うことにした。あげずにいて後悔するよりも、あげて後悔するほうが断然いいなって思ったのだ。あげたいっていう願いは少なくとも実現できるわけだから。

 注文してしばらくして、丁寧に梱包された箱が届いた。でもやはりこの時も、嬉しい気持ちと不安な気持ちが入り混じって複雑な感情だった。これを見た彼女がどんな反応をするだろうか、少しでもあぁこれかっていうような素振りを見せたらどうしよう、そんなことを考えてしまっていた。

 でも、もう手元に届いてしまったわけで、いまさら別のプレゼントを用意するわけにもいかないので僕は腹をくくった。

 そして彼女にプレゼントを渡すための別の準備に取り掛かった。

 バースデーカードの用意である。

 これまた僕には事前に考えていた案があって、文房具屋さんに行って彼女の好きなキャラクターのバースデーカードを買ってきた。以前目星を付けていたカードはあいにく置いてなかったんだけど、別の良いものがあったのでそれにした。

 とりあえずカードを買って満足した僕は、カードにメッセージを書くのは後回しにして、当日どこへ行くかについて考えを巡らせ始めた。

 これはものすごく難航した。悩んでも悩んでも答えが見つからない。最善だと思うものを見つけ出せず、僕にとっての最善が彼女にとってそうではないかもしれないという恐怖感だけがつのった。

 この時の僕は、彼女に一番楽しい誕生日のお祝いだったと思ってもらいたいという考えにとりつかれていた。彼女は人気者だから僕以外の何人かにもお誕生日をお祝いしてもらう予定があった。だからその中で僕と過ごした一日が一番楽しかったって思ってもらわなきゃって自分でめちゃくちゃハードルをあげていた。

 彼女は遠出するのがあんまり好きじゃないし、気張って遊園地行こう!みたいなプランが良いとは思えなかった。手頃な良い場所も思いつかなかったし。

 ちょっと遠くのどこかへ行くっていうと早起きをしなきゃいけなくなるってのもネックだった。

 ケーキをどうするか問題もあって、誕生日だからケーキは外せないけど、どこのケーキを食べるかっていう悩み。

 いろんな事を考えすぎて、どうすればいいか分からなくなって、叫びだしたくなりながら、ネットでいい場所がないか調べていると、ちょっとおしゃれなケーキ屋さんとお菓子屋さんと雑貨屋さんが合体したような場所を見つけた。ここからそれほど遠くない。ここはいいんじゃないかと思った。

 僕の悩みを解消する糸口が見えた気がした。

 だけどやっぱり悩みは尽きない。

 ここのケーキは美味しいんだろうかとか、彼女が食べたいと思うようなものがあるんだろうかとか。ネット上でケーキを何種類か確認できたものの、味に関しては未知数だし、そもそもこの場所の雰囲気を彼女が気に入ってくれるだろうかという不安もあった。

 去年、彼女の誕生日を祝うために行ったケーキ屋さんがあって、そこのケーキは僕が今まで食べたケーキの中で一番おいしくって、彼女もとってもお気に入りのところ。だからそこにすれば確実に美味しいって喜んでくれるっていうのは分かっていた。でも同じ場所というのはあまりにもひねりがなさすぎる。無難なほうに逃げた感じになるのも嫌だった。でも冒険して失敗するのも同じくらい嫌だった。

 読んでいて分かってくれると思うけど、僕は心配症で優柔不断なダメな奴だ。

 こうやってずーっと一人でぐずぐず悩んでいた。

 悩んで悩んで、ケーキだけを主体に考えれば去年行ったところに行くのが正解だろうけど、今回はケーキに加えて他の楽しさもありそうなところに行ってみるのもいいかもしれないという結論に至った。

 僕の悩み方は最終的に、当たって砕けろっていう気持ちで大体固まる。

 ひと通り決まって安心した僕は、バースデーカードに未着手だったことを思い出す。急いでどうやって書こうか考えた。ネットで書き方を調べて、Happy Birthdayってボールペンでちょっとおしゃれに書いてみた。絵も書いた。文章は気持ちを込めつつ、あまりぐだぐだしないようできるだけ完結に。

 バースデーカードも完成。

 プレゼントを入れるための紙袋は100均で可愛いやつを見つけてきた。これに関してはそんなに悩まなかった。

 これで準備完了。