かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

彼女の甥っ子に

 今日、僕は仕事が早く終る日で、彼女と一緒に仕事をしたあと先にあがった。

 彼女を残して帰るのはいつも名残惜しい。仕事が終わってから一時間位はついつい職場に残ってしまう。今日もちょうど彼女の休憩と被ってたからゆっくりした。

 でも実は僕には仕事終わりに行きたい所があったのだ。時間に猶予がないわけではなかったのでゆっくりしていてよかったのだけれど。

 で、その行きたいところとは本屋さん。

 彼女の甥っ子がもうすぐ誕生日だから、なにかプレゼントを用意しよう、と思っていたのだ。以前彼女と本屋さんに行った時に、可愛い!って気に入った絵本があって、それをプレゼントにしようという思惑だった。

 彼女が仕事終わるときにまた会いに行くねと約束をとりつけ、車を走らせ本屋さんへ。児童書コーナーに行ってこの間の絵本を探したけどない。入念に棚を探したけどない。困った。とっても困った。あの絵本をあげようと考えていただけで、もしかなったらどうしようというところまで全く考えていなかったのだ。

 あれやこれやと棚の本を手に持ってみるもののしっくりこない。そもそも、甥っ子がどんな本が好みとか、どんな本を持っているとかほとんど知らない。有名な本とかおすすめされているような本はもしかしたら持っているかもしれないし、どんな本でも気に入ってもらえるわけではないだろう。しばらく悩んで、もう一つの本屋さんに行ってみることにした。

 こちらの本屋さんにも欲しかった本は置いていなかった。しかも品揃え的にはさっきいた本屋さんのほうが良い。また何冊か手にとって眺めてみたけどこれ!ってものが見つからず、しかたがないので先ほどの本屋さんまで戻ることに。

 もうどうにかここにある本の中から選ぼう、と決意して真剣に悩む。音がなる本もいいような気がする。でも音がうるさかったら甥っ子は喜ぶかもしれないけどお母さんとか周りの人が迷惑かもしれない。好みもあるだろう。1歳の子向け!という本があって、中を見てみると確かにそれくらいの子が好きそうな要素が詰め込まれていたのだが「これを読むお母さんへ」という感じで、いちいち、こんなふうに読んであげてとか、あかちゃんはこういうのが好きなのでこうやってあげてとか指南してくれてあって、これを僕からもらった甥っ子のお母さん(彼女のお姉さん)はどんな気持ちになるだろうか、と想像すると違うなって思った。

 悩んで悩んで、悩みすぎて答えが出なくてちょっとパニックに陥りそうになった。

 昨日休みだった僕はぐーたらして外出しなかったわけだが、昨日の余裕のあるうちに出掛けて本を選んでおけばよかったとすごく後悔した。

 何度も何度も同じ棚を見回して、ふと気になった本を手にとって見るとなかなか素敵で気に入った。「のりもの」と「どうぶつ」の二種類があって、最初「のりもの」の方がいいかなと思ったんだけど「どうぶつ」のほうが可愛くて表紙の感じもよかったのでこれ以上悩んでも仕方がない!と思い切ってレジへ持っていった。

 この本屋さんでラッピングの包装紙が選べることは事前に調査済だった。ラッピングをお願いし、予定通り可愛いデザインの包装紙を選んだ。

 プレゼントが用意出来て一安心だったけど、これを喜んでもらえるか、気に入ってもらえるかとすごく心配だった。

 彼女の仕事終わりに合わせて会いに行き、いつもどおり仕事の話やらなんやらをした。彼女は体調が良くないとのすごく疲れているのとで、とってもしんどそうだった。彼女を元気づけるためのプレゼントを用意していたなかったので申し訳なく思いながら、甥っ子へプレゼントを用意したよって話をした。

 こんなのもらっても困るとか、迷惑って言われないか不安で不安で、彼女がそんなこと言わないとは思っているんだけど、どうにも心配だった。

 もちろんそんな心配は杞憂に終わって、彼女はありがとうって喜んでくれた。家に帰って甥っ子のお母さんに渡してくれて、お母さんも喜んでくれたみたい。安心した。甥っ子は寝ちゃっていたから明日渡してくれるみたい。楽しみ。

 彼女は「よくみつけたね!」「かなりすてき!」って褒めてくれて、とっても嬉しかった。長いこと悩んだかいがあった。ちゃんとこういうところで僕を労ってくれる彼女の優しさとか気配りってのがすごく嬉しい。素敵だなって思う。

 僕の身近であかちゃんと言う存在を感じたのが彼女の甥っ子が初めてで、僕にとってただの知り合いの家のあかちゃんという感じではなく、変な感じだけど僕にとっても甥っ子のような感覚がする。元気に一歳の誕生日を迎えられることが嬉しいし、それを祝ってあげたいなって思った。彼女のことが好きだから、彼女の好きな甥っ子の誕生日を祝うことで彼女からの評価をあげようという打算があるわけではなく、純粋に甥っ子のためになにかあげたいなという気持ちだった。彼女も喜んでくれるかなっていう気持ちがあったのは事実。

 不安でいっぱいだったけど、なんとかプレゼントは成功したみたいで本当に安心した。安心して涙が出そうになるくらい。

 彼女から楽しそうに本読んでるよーっていう報告が来るといいなあ。