かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

勝てるわけがない戦い

 チンピラにセクハラされていたヘムレンさんが異動して、セクハラの対象が彼女になるんじゃないか、と心配している昨今。彼女の近くにチンピラがうろうろするだけで僕はピリピリしている。人としてチンピラは好きでないし、もし彼女に何かしたら僕の全てを掛けてあいつを地の底に叩き落としてやろうと思っている。

 そもそも、チンピラのセクハラ対象が彼女ではなくヘムレンさんだったのは、単にヘムレンさんが攻略しやすそうだったからであって、決してヘムレンさんが彼女よりも魅力的だったからではない。

 だが、ヘムレンさんはチンピラからのセクハラを嫌がりながらもどこかチヤホヤされている状態を楽しんでいるフシがあって、もしかしたらその中に彼女に対する優越感みたいなものがあったのかもしれない、と最近思うようになった。

 僕の後輩に男が二名いるんだけど、そいつらとヘムレンさんは仲良く遊びに出掛けたりしていて、それもまた男と仲良くしている自分に酔っているみたいなところが見受けられた。ちやほやされたいんだなあってのは日々凄く良く伝わってくる。かまってちゃんなのだ。

 で、僕と彼女がいる場で、後輩と遊んだことや三人の中でしか分からない話を出してくるのは、アピールというかこちらに対する対抗意識みたいなものだったのかなと思った。

 僕と彼女はとっても息があっている。阿吽の呼吸みたいなものだ。多くを語らずとも意思の疎通ができるし、お互いを信頼している。ヘムレンさんは僕たちの様子をよく見ているし、仲の良さもわりと把握していたはずだ。これは憶測の域を出ないけれども、もしかしたらヘムレンさんは僕と彼女の関係を羨ましく思ったり嫉妬したりしていたのかもしれない。僕たちの関係というよりも、彼女に対してかな。彼女には自分のことを分かってくれる人、信頼してなにかを任せられる人、高いレベルでコミュニケーションが取れる人として僕がいる。それが羨ましく思えたんじゃないかなって先日ふと気付いた。しっかりとした感情としてあったかは分からないけど、無意識下とかぼんやりとした思いの中でそういうものがあったかもなって。

 だからこそ、チンピラにセクハラされることとか、後輩たちと遊ぶことかで、自分も構ってもらえるし、大切にされているという感覚を得たかったのかなって。そしてそれをアピールして負けてないぞって言いたかったのかなって思った。

 でも残念なことに、ヘムレンさんよりも彼女のほうが何倍も魅力的だ。これはもちろん僕の主観だ。他の人がどう思うかは分からない。彼女のほうが魅力的だって大半の人が言うだろうと僕は思っているけどね。あ、でもヘムレンさんを貶めようというつもりはない。彼女のことが大好きで、他の女性が魅力的に見えないというだけだから。ヘムレンさんとも会話をすることが何度もあったわけだけど、彼女と話している時に感じる心が踊るような感覚は全く味わえなかった。同じ年頃の女性なのに。

 僕よりもレベルが低い男たちにちやほやされて喜んでいるヘムレンさんが、彼女に勝てるわけがなかったのだ。完敗である。そもそも彼女からはライバル視もされてなかったわけだし。

 今後チンピラが何か行動を起こそうとしたら阻止するし、そもそも彼女の攻略難易度が高そうというのはチンピラも分かっているだろうから手を出そうとしてこない可能性もある。僕が毎日ピリピリしているくらいでいてくれれば一番良い。地の底に叩き落としたいという気持ちもあるけど。