かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

ホームラン級の馬鹿

 彼女はやっぱり頼もしいなあって思った。

 今日、仕事で行っている作業について内容の変更を上司から提案された。この上司は最近異動してきて急に権力を持ったので調子に乗っている。しかも上司だからこんなことを言うのは失礼だけど、結構な馬鹿だ。

 上司の提案自体は100%肯定はできないけど言いたいことは分かるというような感じの物だった。僕は変更した場合に起こる弊害について上司に説明した。この点について考慮しなくちゃいけないとか、変更するとしたらこういう問題が起こる可能性がある、とか。それをきちんと理解して対策を講じた上で変更するのであればいいかなと思っていた。

 上司は彼女にも同じように、変更の提案をしたようで、僕の意見を聞いた後に彼女と話をしていた。結論が悪い方向にはいかないだろうと思った僕は自分の仕事に専念していた。

 仕事が終わった後、上司とどんな話をしたのかというのを彼女から教えてもらったのだけれど、驚愕の内容だった。

 まず僕が言ったことが一切理解されていなかった。同じことを彼女がまた上司に伝えている感じになっていた。上司は現状のシステムに問題があるという前提の下、それを変えたいという考えに支配されていて、こちらの話なんてそもそも理解する気がなかったのかもしれない。もしくは理解できなかったのかもしれない。

 で、彼女と上司は具体的な話までしたようで、これを変更するとかこれは現状のままにするとかいう会話をしたらしい。その過程で彼女は同じ説明を何回も説明するはめになったようだ。

 必要ないから撤去しようという上司に対し、これは必要だからそのまま残した方がいい、なぜなら理由はこうだから、という説明を彼女がする。それを受けて納得した素振りを見せても、また似たような状況を前にすると必要ないから撤去しようと言い出す上司。彼女はまた同じ説明をして残すように言う。また納得する、ということを三回通りやったらしい。認知症のおじいちゃん相手かと思う。

 そして彼女は事あるごとにこちらの主張を無視して、自分の考えを押し進めようとする上司に対し、毅然とした態度で意見を述べ、屈することなく戦った。結果、上司はほんの少しの変更で満足し(本来もっと変更したかったのだろうから不満を持ってもおかしくないのに、ご機嫌だった)僕たち作業をする側にとっては大きな変更もなく、やりにくくならない良い条件で決着した。

 上司の主張に対し、理由の提示を求めたところ、上司はあさっての方向から理由を引っ張り出してきて、それがあまりにもぶっ飛んでいたので彼女は、この人だめだって思ったみたい。僕もその話を聞いて爆笑した後に、あぁとても残念な人なんだなって思った。

 話し合いの結果を彼女から聞いて、やっぱり彼女に任せておいて安心だったなと思った。他の人が仕事の内容の変更について上司と話し合いをしていたら、こちらにとって都合の悪いようにならないか不安でたまらないだろうけど、彼女なら安心だ。

 上司の理不尽な主張や、根拠のない偽りの改善案なんかを彼女は的確に打ち返すことができる。相手がどんな手法で攻めてきても、彼女は揺るがない。だから頼もしいなって思った。彼女に任せれば安心だなって思えるこの信頼感はすごく良いものだなと思った。彼女に全部任せようなんてずるい考えにはなっちゃいけないよ。

 上司の日本語が通じないくらいの馬鹿さ加減が衝撃で、仕事終わりにちょっと話をして帰ろうって思っていたのが、一時間半くらい盛り上がってしまった。最終的に笑い話にはなったものの、彼女が受けたストレスはかなりのものだったろうなと思う。おつかれさまでした。