かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

うかれた僕

 今日は彼女と遊んだ。

 ちょうどクリスマスイブだけど、だから休みを取ったってわけじゃない。休みを取れるのが今日だったというだけだ。僕も彼女も、クリスマスで浮かれている人だと思われたくないという妙なプライドを持っていて、たまたま今日が休みだっただけだもんねーって言いながら今日を迎えた。

 お昼ごはんは食べないことにしようかーって感じだったんだけど、飲み物を買いにコンビニへ寄ったら肉まんが食べたくなったので二人して食べちゃおう!って言って買ってしまった。美味しかった。コンビニの肉まんは二人の好物。

 その後、今日の予定としてケーキを食べようかって案が出ていたんだけど、絶対混んでるよねってことで、ケーキの対極に位置するお団子を食べに行った。おいしいところがあるのよ。さすがにクリスマスイブには混んでいないらしく、悠々お団子を手に入れもぐもぐたべた。美味しかった。その場でも食べられるんだけど車に持って帰ってきて食べていたら、温かいお茶が飲みたくなってきた。それをつぶやいたら彼女が、買ってきてあげる!って走って買いに行ってきてくれた。超優しい。温かいお茶とお団子最高に合う。彼女のおかげで美味しくお団子が食べられた。いつも彼女になにかさせるのを申し訳ないなと遠慮してしまいがちなんだけど、彼女がやってくれるっていう時に素直に甘えたほうがいいなって思った。せっかくの彼女の気持ちを僕が潰してしまうことになるから。

 それからどうしようかーって相談してショッピングモールに行くことにした。相談っていうか彼女が提案してくれたんだけどね。

 ショッピングモールに向かう道中、彼女とお喋りをする。仕事のこととか全く関係のないくだらない話とか、彼女の友人の話とか。どれも楽しくてたまらない。

 お団子買いに行く道中も、その前にお金おろそうと思って銀行に寄った時も、僕の目に映る彼女はいつも可愛い。仕草も表情も佇まいも全部が可愛い。笑った顔も、僕がくだらないこと言った時に小突いてくるのも、あれ見てって腕を引っ張ってくるのも。

 ショッピングモールに着く前に、雑貨屋さんが通り道にあるってことで立ち寄ることにした。一周ぐるーっと回ろうっていう特に目的もなく回っていたんだけど、彼女がクリスマスプレゼントを買ってあげるって言ってくれた。嬉しかった。彼女はクリスマスというイベントに特別思い入れがあるわけではないと以前から言っていたし、今月の様々な出費で金欠状態であることも知っていた。だからまさかここでプレゼントを買ってあげようって考えてくれているなんて思いもしなかった。まず、プレゼントをあげようって考えてくれたことが嬉しかった。それで改めて店内を見て回って、素敵なグラスを見つけた。最初パグのぬいぐるみを買おうか!ってなったんだけど、可愛くて触り心地は良いもののこれを貰ってどうするかって思ってしまった。それから素敵なグラスを見つけて、すごく気に入った。これ買ってもらったら嬉しいな!って思った。本当に買ってもらえるんだろうかって思いながら気に入った!気に入った!って言ってたら彼女が本当に買ってくれた。気に入って、欲しいなって思ったものを買ってもらえるのってかなり嬉しいね。パグよりもお高いやつになってしまって、欲しい欲しいって言った後にちょっと申し訳ないなって思った。でも嬉しかったのでうきうきした。

 この時僕は同時に別のことを考えていた。ここで僕がプレゼントを買ってもらう流れで焦らないと、プレゼントを用意してあることがバレバレになってしまう!と。仮に僕がプレゼントを用意していない状態で彼女がプレゼントを買ってくれるってなったら、やべえ!僕は何も用意していない!どうしよう彼女になにかあげなくちゃ!って焦るはず。でも僕はプレゼントを用意してあっていつ渡そうかなあって考えている段階だったから、彼女がプレゼントをくれるって言ってもじゃあ後でプレゼント渡そう!くらいに思うだけで焦らない。

 彼女にプレゼントを用意してあることは現段階では言いたくない。ムードってものがなさすぎる。でも僕の演技は下手すぎるから変に焦ってもバレちゃう。それに彼女にプレゼント買ってもらえることが嬉しくて、テンションあがってるので焦れない。バレてもいい。とりあえずプレゼントをスマートに渡そう、って思った。

 車に戻ってきて、彼女にありがとう!って言って、僕もプレゼント用意してあるんだってことを伝えた。僕の中ではわりとスムーズな流れでの発言だった。彼女には「だろうと思った」と言われてしまって、もう少し策を練るべきだったと反省はしたけれど、おそらく彼女は今日が始まる前から僕がプレゼントを用意していることは想定済みだったのであろう。

 見つからないようにとトランクに隠したプレゼントをごそごそ取り出してきて、彼女にどっちがいいですか!って聞いた。プレゼントは二つ用意してあったのだ。片方は完全におまけで、そもそもクリスマスプレゼントとして渡す予定じゃなかったものなんだけどタイミング的にもちょうどいいからと思って用意したもの。もう片方はしっかりクリスマスに合わせて用意したもの。二つとも二日前くらいに包装紙とかテープを用意して自分でせっせとラッピングした。クリスマスプレゼントだからクリスマス感満載のラッピングにしようと思って、クリスマス以外に使い道のない包装紙やら紙袋やらを買った。なかなかいい感じにできたと思う。リボンは上手く結べず三十分くらい格闘した。

 彼女のご要望はインパクトの薄い方からということだったので、さくっとおまけの方を渡した。おまけにも良い反応をしてくれてこのまま飾るねって言ってくれた。僕と彼女が共通で好きなキャラクターのストラップ。すぐに売り切れちゃうやつだったから急いで注文したらこの時期にうまいこと到着した。おまけちゃん。

 そして二つ目のプレゼント。こっちがメイン。前に彼女とお買い物してた時に見つけた日記帳。毎日設定された質問に回答を書き込むだけでその日の日記になるっていう面白いアイディアのもの。しかも五年分書き込める。彼女が欲しがっていたからプレゼントしようって思ったのはいいんだけど、ちょっと不安もあった。欲しがっていた時から一ヶ月くらい時間が経っていたから自分で買ってしまった可能性があること。あと五年分の日記って重いかなっていうこと。毎日のように僕に貰った日記だって思い出すことになるのが重いかなって。まあでも良いプレゼントだと思ったのできっと喜んで貰えるだろうと信じて渡した。

 結果、彼女は喜んでくれた。嬉しそうにラッピングを開けてくれているのを見て、自分で一生懸命やってよかったなあって思った。そういうところ手を抜かなくてよかったなあって。

 どれくらい喜んでもらえたのかは分からないけど、日記を書くことが好きな私にはいいプレゼントだったって言ってくれたから、僕はその言葉を信じて喜んでおく。

 できればその日記が終わる五年後にも僕は彼女のそばにいたい。重いか。

 さて、思わぬプレゼントを貰ってごきげんな僕はるんるんでショッピングモールへと向かった。

 特に目的もなく、あれやこれやと言い合いながらぐるぐると歩き回った。そもそも最近金欠気味な僕たちは、よーしじゃあ奮発して服買っちゃうぞー!とかちょっといいもの買うぞー!みたいな発想にならない。欲しいものという目的がないので、完全に見て回るだけって感じになったけど楽しかった。クリスマスイブだけあって、カップルがたくさんいた。普段の僕ならカップルに憎悪を抱いて爆発しろって思うんだけど、今日は彼女が一緒で最高に幸せだったからカップルの存在を許せた。仲良くやって欲しい。

 晩ご飯はこの間飲み会で行ったお鍋がおいしいお店にした。

 飲み会での食事が思った以上に美味しかったから、食べたくなっちゃったのだ。ちょっと混んでいてしばらく待たされたけど、料理が美味しかったのですぐに元気になった。基本的に料理を取り分けるのは僕の仕事。楽しいし、彼女が喜んでくれるからやりたい。でも今日は彼女がお鍋を取り分けてくれた。それがすごく嬉しくて幸せだった。一緒に暮らしてご飯食べたらこんな感じなのかなって妄想して、本当に心の底から嬉しくて、気持ち悪い顔して喜んでいたと思う。彼女が僕の食べたのを見計らってうつわによそってくれる。こんな幸せ感じたことなかったっていうレベルの幸せが僕を襲った。そんなことで?って思うかもしれないけどなんだかすごく幸せだった。僕の頭のなかはたぶんキラキラ輝いていたと思う。

 おいしいし、幸せだし、熱いもの食べてはふはふしている彼女は可愛いし、楽しくて楽しくて終始笑顔でご飯を食べることができた。

 大満足して店を出てきたら一時間以上経っていて、いつもならもうそろそろ帰らないとっていう時間になっていた。うわああもう帰らなきゃいけないのかーって楽しさから一転して悲しさに包まれそうになった。でも彼女がまだいいよって言ってくれた。今日はもうちょっと遅くまでいいよって言ってくれたのだ。それが嬉しくて嬉しくてまた僕は元気になった。

 じゃあいつも寄る本屋さんに行こうってことで向かいながら途中ガソリンを入れて、彼女はちょっと疲れたらしくって少し座席を倒して横になっていた。わりと移動の間無言の時間があったんだけど、全く苦痛ではなくてむしろ心地よい時間だった。彼女が隣にいてくれるっていう幸せ。

 本屋さんに寄って、ディスカウントショップにも寄って、いつもよりだいぶ遅い時間に帰宅した。

 いつもならもう帰ってるっていう時間に彼女と一緒にいられてすごく嬉しかった。幸せだった。

 今日は一日中ずっと楽しくて、彼女と今日遊んで本当に良かったって何度も思った。僕に付き合ってくれた彼女に何度も感謝した。素敵な一日だった。今まで僕が過ごしてきたクリスマスイブの中で一番幸せな日だったと思う。それくらい楽しかった。

 クリスマスイブなんて別に意識してないし!なんて思ってたけど、やっぱりなんとなくイベントって感じはあって、特別感もあって、それが今回はいい方向に作用してくれた。彼女とクリスマスイブを楽しめた気がする。特別なことはあんまりしてないんだけどね。

 今日のこの幸せな時間が今年のクリスマスプレゼントかな!なんてね。