飴
彼女が遭遇した面白い出来事について話そう。
彼女がある日、とある趣味の集まりで友人と話をしていたところ別の女性に呼ばれた。
「コロ助くん(仮名)に飴あげて!」
どうしたんだろうと思いながら向かった彼女に、女性はそう告げた。コロ助というのは僕が大っ嫌いな男で、なよっとした頼りない系イケメンだ。僕は彼をイケメンとは思わないけどね!まあとにかく、彼女はいきなり呼びつけられたうえにコロ助に飴をあげろと命じられたのだ。
確かにその日彼女はのど飴を持っていた。のどが痛いとか、調子が悪い人に飴を差し出すのはやぶさかではないだろう。ただ、なぜ命じられなければならないのかという話だ。自発的に渡すのと、誰かに言われて渡すのとではだいぶ違う。
彼女はその時、なんで私が飴をあげなくちゃいけないの?って思ったらしい。当たり前である。当然の疑問だ。飴ちょうだいって言われるならまだしも、飴をあげてってわけがわからない。
彼女は飴一つごときでちっちゃいやつと思われるかもしれないからこの話をあんまりできないって言っていたんだけど、飴一つだろうがなんだろうが関係ないと僕は思う。
はるか昔、習字の授業中に買ったばかりの墨汁を持った僕に、墨汁がないって言っている人に分けてあげなよって言ってきた人がいたのを思い出した。僕が買ったばかりのほぼ満タンの墨汁を持っているからってなんで無条件に分け与えなくてはいけないのかと、あまりの理不尽さにブチ切れた思い出。懐かしい。
自分のものでもないのに、それを他人に分け与えろと命じるお前は何様なのだ。
飴をあげてと言われた対象のコロ助はさして彼女の飴を欲しがっていたようでもないし、彼女はコロ助のことが好きじゃないからあげたくない。これ誰も幸せになっていない。
そして飴あげてって言った張本人は背を向けて別のことをしだす。
どうやらこの飴女さんはコロ助のことを気に入っているらしく、気が利く女アピールをしたかったんじゃないかというのが僕の見解。ただ普段の飴女さんからすると彼女にそんな命令をしてくるタイプでもないらしい。気が利く女アピール目的だったとしたら見事にスベってるし、彼女に不快感を与えた罪は大きい。
彼女の中では、あまりに筋の通らない出来事だったようで、理解できず現実に起こった出来事なのか分からなくなってきて、もしかしたら飴あげてって言われてないかもしれないとか言い出した。
現実に起こった出来事で間違いないんだけど、あまりに不可解過ぎて彼女は自分を信じられなくなりかけていた。
飴女さんがコロ助に気に入られたいがために、彼女をだしに使ったという事件なんだけど、色々突っ込みどころがありすぎて面白かった。
昨日の夜この話で大盛り上がりした。
彼女から飴女さんの続報が聞けるのを楽しみにしておこう。