かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

新しいおばさん

 休日である。

 彼女は体調が悪いながらも仕事を休むわけにも行かず、頑張って働いている。一方の僕は、車を洗ったりホイールを換えたいなーとカー用品店に行ったりして休日を有効活用した。パソコンに向かってどうでもいいサイトをだらだら眺めているよりはだいぶ有益。

 最近職場に新しい人が入ってきた。おばさん。この人、僕と苗字が同じなんだけど全く関係はない。

 少し前、あまりの仕事の出来なさと、あまりの人格破綻者っぷりで職場の歴史に深々と名を刻んだおばさんがいた。在籍一ヶ月程度で辞めていったんだけど、その間に残した伝説は数知れない。そんなことがあったから、みんなトラウマになっていて、次に入ってくるおばさんがそんな人じゃないといいねという半ば祈りのような気持ちでいっぱいだった。

 昨日、新しく入ったおばさんを初めてみて一緒に働いた彼女は言った。

「伝説のおばさんと同じ雰囲気を感じる」と。

 この職場、まともな人が入ってくる確立が極端に低い。前回入ってきた人がひどい人だったから今回はきっとまともな人だよ!っていう希望が持てない。

 そして今回もまたみんなの不安が的中してしまった。

 彼女の担当している仕事の関係で、昨日も今日も新しいおばさんについて一緒に仕事をしなくちゃいけなかった。昨日で嫌な感じを受けていた彼女は今日の仕事が非常に憂鬱そうだった。そりゃそうだ。同じ立場だったら僕だってすごく憂鬱だ。

 間違っているところを指摘するのも、それに対して何度も同じ説明をするのも、気分の良いものじゃない。ストレスが溜まる。相手の気持ちだって考えてしまう。何度も同じ説明されたら嫌だろうなとか、ミスを指摘されたら嫌だろうなとか。

 それが仕事の覚えが早かったり、やる気があったり、仕事に対して積極的な姿勢でいてくれるならまだましだ。でもどう考えても新しいおばさんはそんな感じじゃない。

 今日一緒に仕事をしてどうだったかというのは聞いてないけど、きっとものすごくストレスが溜まったことだろう。ちょっと厳しめに言ってしまったって彼女が言っていたけど、そうなるのも仕方ないし必要なことだろうと思う。

 彼女は教えるってことに関して非常に上手だし責任感もある。以前言ったかもしれないけど仮に僕が今の職場の上司だったとして、新人の教育担当に一人選ばないといけないといったら間違いなく彼女を選ぶだろう。安心感が段違いだ。

 厳しく言わなきゃいけない所はきちんと厳しくできるし、相手が理解しやすいよう言葉を選んで説明ができるし、必要であれば資料を作ったり、簡単なメモを書いてあげたりっていう機転も利く。本来上司がやらなければいけないようなことまで彼女なら気付いてやれてしまう。

 視野が広く、気配りができて機転が利く彼女だからこそ、多くのことに気付いて行動することができる。必然的に他の人に比べて作業量が増えて負担が増す。

 誰かを指導するときだって、その人の問題点に、より多く気付けるということだから説明することや指摘する箇所も増える。やっぱり彼女の負担は大きくなる。

 彼女の能力の高さゆえに、ストレスが溜まったり疲れが蓄積したりはするものの破綻してしまうことはない。だから周りは彼女の苦労を理解できない。彼女が思い悩んで苦渋の決断をしていたとしても、周りからはそつなくこなしているように見えてしまう。仕事できる!って言われても頑張ってると思われなかったり苦労を理解してもらえなかったりするのはつらいよね。

 今日の状態は分からないからなんとも言えないけど、きっと今日も周りからみたら彼女の苦しみやストレスっていうのは伝わらずにきちんと指導しているっていう部分だけが見えていたんじゃないかなあ。

 体調も良くないのに、きっと彼女はすごく頑張ったことだろう。

 おつかれさま!