かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

キャッチボールの達人

 僕は話下手で彼女は話が上手い。

 こんな風に自分にレッテルを貼ってしまうことで自分はこのままでいいんだと思ってしまうという問題点に関しては今回深く追求しない。このままでいいとは思ってないし。

 僕は話し手か聴き手かで言えば確実に聴き手である。自分が話すよりも相手が話していてくれた方が楽。笑ったり適当な返しをしていれば会話が進んでいく。

 彼女の場合、主に話し手ではあるが聴き手ができないかと言えばそうでもない。器用である。でも僕が見る大部分の彼女は話し手側である。彼女から出る話題は尽きない。何か遭遇した出来事の報告だったり、思いついた事に関する説明だったり、過去の出来事に関するエピソードだったり。とにかく豊富。些細な事でもきっちり話題にして会話を広げられる。

 仕事中に僕が彼女のところへ様子を見に行くと必ずと言っていいほど一つ以上の話題を持っていて話を振ってくれる。30分とか1時間くらい間隔があるとはいっても、簡単なことではない。僕なんか彼女が会いに来てくれても特別話題がないってことがよくある。昨日は彼女の調子があまり良くない日で、話題を振るような気力がない日だった。こういう時は僕が頑張らなきゃいけないんだけど、彼女を構いたい気持ちはあるものの、話しかける言葉が見つからなくてただ目を合わせただけで何も言えず、彼女がなんなの!ってなってしまうことがあった。この時僕は本当にだめだなあって思った。些細な話題も見つけられない。目に見えて元気じゃないのに、調子どう?なんて聞けないとか、調子悪そうなのに軽率な事言えないとかそんな事ばっかりが気になって言葉が出てこない。そこを気にしつつも、全く違うところから話題を持ってきてさりげない会話とかできたらいいのに。

 彼女は僕の調子が悪いときでも話しかけてくれるし、いろんな話題を持ちかけてくれる。

 僕は会話のキャッチボールの初球を投げるのがものすごく下手なのだ。一度始まれば、会話を広げたり、適切な相槌を打つことは可能なんだけど、始まりの言葉が上手く見つけられない。毎回彼女が投げてくれる。それじゃあだめだと思って話題を探して投げた球は非常に取りにくいところに飛んでいってすぐにキャッチボールが終わってしまう。

 彼女はとっても気軽に、さり気なくこちらに話を投げかけてくれる。聞いてよー!って感じだったり、思い出したんだけどって感じだったり。時にはむかつくー!って勢い良く話しだしたり、ある時は俯いて悲しげだったり。彼女の話す言葉はこちらによく伝わってくる。あの人の着ているTシャツの柄が可愛かったなんていう些細な話題でも、ふーんで終わらずに何故か広がっていく。こちらが返しやすい位置に投げてくれる感じ。

 以前も思ったけど、彼女の話には感情が上手く乗っている。だからこちらも受け止めやすいし返しやすいんだと思う。

 彼女と一緒にいて楽しいのは、この彼女の会話スキルによるところが大きいと思う。そんなに仲良くない頃に彼女が話しかけてくれて嬉しかったのも、不思議と会話が弾んだのも、それからの日々の会話が退屈にならないのも、全部彼女の会話スキルのおかげ。

 こうやって彼女の良い所を考えていると、本当に素敵な人なんだなあって思う。こんなに素敵な人いないよ。彼女を好きになってよかった、間違ってなかったって思う。嬉しい。