かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

バベキュ

 今日は彼女に誘われてBBQに行ってきた。

 どんな集まりかというと非常にわかりにくくて、誰かの友達の友達とかが来ているくらいの、10人を超える大所帯。そしてみんな初対面くらいの勢い。正確には違うけどね。

 かなりの人見知りでコミュニケーション不全と自認している僕は、かなり不安だった。上手く交流できる自信が全くなかったのだ。

 彼女と、以前同じ職場で働いていた上司の二人としか気兼ねなく話せる状態ではなくて、その二人が僕の頼みの綱だった。

 全員が揃い、さあBBQを始めるぞと言う段階で、席順をどうしようかという話し合いが繰り広げられた。結局割り箸に番号を書いて引く、というくじ引き形式でランダムに決められることとなった。僕としては予想外の出来事。頼みの綱である二人の隣に座る予定だったのにその予定は脆くも崩れ去ったのだ。

 割り箸を引いた結果、彼女と僕は一番離れた位置にそれぞれ座ることになってしまった。絶望した。でもこの結果が不服だからと駄々をこねるわけにも行かず、僕はおとなしく知らない人に囲まれてBBQを始めることとなった。

 僕の人見知り具合を知る彼女は、初めから僕のことを気にしてくれていて、僕が一人にならないようになるべく近くにいてくれるという話だったので、なんとか頑張れるきっと大丈夫だと思っていた矢先に離れ離れになったのでショックは大きかった。ただ離れていても様子を見に来てくれるって言っていたので、少しだけ救われた。

 野菜や肉を焼き始め、徐々にみんな会話が弾みだし、僕はそれに上手く入れない感覚を抱いたままなんとか過ごしていた。時折彼女が近くに来てくれて、その時は彼女ばかり見て彼女とばかり話をして過ごせたので多少気分が楽だった。

 僕が馴染めていないことに気づいて気を遣ってくれたのか、隣りに座った男性が僕に話しかけてくれた。彼のお陰で僕も少しだけ話題に絡んで行けて、唐突に振られるネタに必死の思いで応え、無言にならないようにどうにか発言していけるようにと頑張った。

 僕が楽しめないと誘ってくれた彼女が責任を感じてしまうし、彼女が僕を気遣うあまり自分が楽しめないなんてことになったら困る。彼女に迷惑をかけたくなかった。

 ただどうにもこの状態では楽しめるようになるビジョンが見えず、彼女の楽しい?っていう問いかけに首を縦に振ることはできなかった。

 ここでは釣りを楽しめる場所もあって、みんなで釣りをしようという話になっていた。僕はこれを結構楽しみにしていて、彼女とペアになって釣りができたらなーと思っていた。だけどなんとなーく話を聞いているとさっきの席分けによってできたグループで分けようみたいな流れになっているのを感じて、またもや絶望。もうなるようになれと自暴自棄になりかけた。

 気づくと彼女が姿を消していて、この場にいるのがつらかった僕は一人でトイレへと向かった。この時彼女はトイレへ行っていたみたいなんだけどどこにいるのか分からなくて僕は不安になっていた。

 トイレへ行きながら、自分が勝手に壁を作ってしまっているんじゃないかとか、性格的にこういう場に来るのが間違っていたんじゃないかとか考えて、自分のコミュ障っぷりに愕然としていた。こんなにも自分はだめだったのかと。せっかく誘ってくれた彼女にも非常に申し訳なく思った。トイレから戻ったらきっとみんな僕の存在なんてなかったかのように楽しんでいるに違いないなんて思いながら歩いて帰った。

 すると彼女がいち早く僕の存在に気づいて声を掛けてくれた。そして釣りのグループを僕と彼女と上司の三人で組むように決めておいたって言ってくれた。ものすごく気が利く。僕はやっと地獄のような状態から開放された心地がした。

 ここから僕のテンションは一気に上昇する。

 やっと僕の隣に彼女と上司がいる状態になって、まず上手くできなくてごめんなさいって謝罪した。全然コミュニケーションがとれないし、みんなに気を遣わせてしまっていると。そうしたら彼女も上司も、上手くやれてるよって言ってくれた。端から見たら楽しく交流しているように見えてるって。自己評価が限りなく0に近い点数だったのにまさかの高評価を頂いてびっくりするのと同時に嬉しかった。僕の精一杯の努力も無駄じゃなかったんだなあと思った。

 この三人での行動なら怖いものなんてない。いそいそと釣りの支度をして、存分に釣りを楽しみ、釣った魚をさばいて焼いた。この頃になると僕の調子はかなりいい状態だった。とくに三人で釣りをしているときは楽しくて仕方なかった。魚が釣れて喜ぶ彼女は可愛いし、釣り自体が楽しいし、気心知れた相手との会話は弾むし、最高だった。

 それ以降、席が固定されるわけでもなく好きなようにバラけて好きなようにみんなで喋ったり川に入りにいったりしていたので、僕はとにかく彼女のそばにいた。彼女がいてくれれば安心だった。なんとも情けない状態だけど、僕はとにかく彼女といたかった。

 釣り以降、他の人とも少しだけ話せて楽しいなって感じることができるようになった。僕が楽しめているから彼女も嬉しそうにしてくれて、よかったって安心した様子だった。最初から最後までずーっと気遣ってくれて本当に助かった。

 最終的には来てよかったなと思えたし、楽しかった。

 もうしばらくこういうイベントはいいかなあという満腹感はものすごいけどね。

 帰りの道中でも、僕が頑張ったって彼女が褒めてくれて、泣きそうになった。

 一生懸命自分なりに頑張ったけど上手くできてないなって思っていたから、彼女が認めてくれて嬉しかった。たくさん気を遣わせてしまって、迷惑かけたから嫌な顔されたっておかしくないのに、僕の頑張りを認めて褒めてくれたなんて優しいでしょ。

 雑なフリに対して拒否したらみんな冷めちゃうだろうなあって思って、恥ずかしさで頭が爆発しそうになりながら必死に応えた。それがすごくしんどかったんだけど、でも彼女に出会う前の僕だったらそれに応えることができなかったな、と思った。彼女との会話の中で、振られたら応えるっていう流れを叩きこまれてきたから以前よりも確実に対応できるようになっているのだ。この点に関しても彼女に感謝した。

 今日楽しめたのは確実に彼女のお陰だ。彼女が全く僕のことを気にしてくれなかったとしたら、僕は本当に今日参加したことを後悔し続けて一日を終えたに違いない。すごく助けてもらった。

 彼女のおかげで今日一日が良い日で終われた。本当にありがとう。