おにゅー

　彼女が髪を染めた。

　染めるに至った過程には様々な事情が絡み合っているようないないような、そんな感じである。

　彼女は黒髪で、学生時代に染めていたことはあったらしいけど僕はその姿を知らない。僕が知っているのは黒髪の彼女だけだ。僕は黒髪が好きだし、彼女の黒髪もよく似合っていると思っていた。

　余談ではあるが、アニメキャラとかだと青みがかった銀髪が好きだったりする。

　それで今日彼女は黒髪を卒業し、晴れて茶色っぽい髪になった。何色って表現すればいいのか分からん。確かミルクティーなんとかっていう色が入っているらしい。確かにミルクティーっぽさあった。ただあんなに白に近い茶色じゃなかったけどね。

　黒髪に慣れていたせいで、凄く明るい茶色になった感じがしたんだけど、たぶん実際はそこまで明るくない。先入観とインパクトの魔術だ。

　僕の好きな感じの色合いだし、彼女にもよく似合っていた。可愛かった。

　思えば彼女は以前から髪を染めたがっていた。踏み切れなかったのは仕事の関係で髪色に制限があるからで、今もその制約下にはいるのだけれど、許容される範囲内で染めることを今回決意した。なにも染めていない状態の黒髪だと重く見えるんだって。僕にはそれがよく分からないんだけど、そういうことらしい。

　僕が感じた変化は、大人っぽくなったなっていう感想。20代の女性に大人っぽくなったという表現が適切なのか分からないけど、でも大人っぽくなった以外に言いようがない。彼女は実年齢より若く見られることが多いから、もしかしたらこれによって歳相応に見られるのかな？でも顔が可愛いからなあ。美容院の人にはこれで高校生には見えなくなったねって言われたらしいから、大学生くらいに見えるようになったかな！

　正直に言うと僕は黒髪が好きだから、彼女が髪を染めるって言い出した時に残念だなあっていう気持ちが少なからずあった。でも髪を染めた彼女を目にしてみれば、この髪色の彼女もまた可愛くて良いものだと思った。単に僕は自分の知っている彼女が別のものへと変わってしてしまうのが怖かっただけなのかもしれない。髪を染めた程度でなにが変わると思っていたのか、と言われればそうではないことは分かっているのだけどね。

　今、染めて良かったか？と聞かれれば良かったと答えることができる。

　髪というのは顔のイメージを決めるのに大きな影響力があるし、彼女の気分転換としても大きな役割を果たしたんじゃないかなと思う。

　彼女も気に入ったみたいでご機嫌だったし、とってもよかった。