かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

とげは本当はやわらかい

 彼女は優しい。

 僕はふとした瞬間に彼女の優しさを感じる。彼女の優しさというのは押し付けがましくなくて、思慮に富んでいて素敵だ。

 優しいと思われたいからやるとか、気が利くと思われたいからやるとか、そういう感じが薄いので、受け取る側からするとそれが優しさとして捉えられない場合もあるんじゃないかと思う。あまりにも自然な普通の中に潜んだ思いやりみたいな。

 例えば、職場のみんなへっていう誰かのおみやげを、なくならないうちに僕のロッカーの中にそっと入れておいてくれたり。あと仕事でもなんでも、僕の行動を先読みして僕がやりやすいようにとか僕が楽になるように先手を打っておいてくれてあることが多い。たぶん僕が気付いてないってこともあるんじゃないかな。

 彼女の気配りはさりげないし、彼女がどうよどうよってアピールしないから気付かないうちに彼女の優しさの恩恵を受けている人は多いんじゃないかな。

 あと他人に厳しくできるのも彼女の優しさだと思う。

 相手のことを思って、必要なことをきちんと指導できる。これを言われたら嫌かもしれないって考えて言わないでおくのは優しさではなくて逃げだ。多くの人は誰かを指導するときに無意識にでも意識的にでも相手に厳しくすることを避けてしまう。

 ダメなところを指摘したり、直らないようなら何度も同じことを説明したり、相手が嫌な思いをするかもしれないことを言って自分が嫌な人だと思われることから逃げてしまう。自分はいい人でいたいという甘えだ。それで表面上は優しい人でいられるかもしれないけれど、それは本当に相手のためにはなっていない。

 嫌な思いをさせるかもしれないけど、ダメなところをきちんと指摘して直させたり、指導したりすることが真の意味で相手を思いやった優しさだと思う。

 彼女だってもちろん相手に嫌な思いをさせるのは嫌だし、嫌われたくないと思っている。それでもこのままでは良くないとか、正しい方向に導いてあげなくちゃいけない時、彼女はそういう思いよりも相手のことを考えて、きちんと厳しくすることができる。これができる彼女のことを僕は心の底から尊敬している。

 僕はすぐ逃げたくなる。表面上だけの優しい人でいるほうが楽だからそちらを選びたくなってしまう。今までは迷うことなくそちらを選んできた。でも彼女に出会って、彼女の優しさに触れて、相手を思いやる気持ちを知って、僕も彼女のように本当の意味での思いやりを持って厳しくするべきところは厳しくしなくちゃいけないなと思うようになった。

 自分の弱い部分に負けそうになる時、彼女ならどうするか、そしてこれをしっかりやれない僕を彼女はどう思うかなんて考えて、楽な道を選択して逃げないようにしている。

 僕は彼女の優しさが好きだ。人を思いやる心が好きだ。

 大好きな彼女を見習いたいなって思うのだ。