かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

出口の見えない

 彼女はちょっとだけ元気になったみたい。

 ここ一ヶ月くらい彼女は原因も良く分からない憂鬱な気持ちと共に生活していて、気分は上がらないし体は重いという絶望的な状況に陥っていた。

 僕はそんな彼女にどうにか元気になって欲しいなあと思いながらも、どうすればいいか分からなかったし、彼女自身もこの状態からどうやって脱すれば良いのか分からなくて困っていた。

 あれやこれや考えていたけど、彼女を決定的に救いだすことはできず、無力感ばかりが募っていた。彼女が元気なかったら僕もつられて元気なくなってきちゃうから、そうならないように気をつけなきゃってずっと思っていた。

 昨日は彼女が早く仕事あがる日で、その後友人たちと食事をする予定だった。僕は仕事をしながら彼女におつかれーなんて言って見送って、彼女が楽しめるといいなあ、元気が出るといいなあって思っていた。

 しばらくして携帯を見ると「だめみたい」って連絡が入っていて、全く楽しめていないというわけではないにしても、やはり思うようにテンションが上がらないみたいだった。

 僕と一緒にご飯食べていたらもっと楽しめたかな?って考えが頭をよぎったけど、今の彼女は誰と食べてもスッキリとしない気持ちなんだろうなと思って、その考えをすぐに隅へと追いやった。

 仕事が終わる直前、僕は彼女の姿を遠目から発見した。ちょっとだけ職場に寄ったみたいでもう帰る所だったんだけど、手を振ってくれた。僕も嬉しくなって振り返した。その姿を見て、手の施しようがないほど元気がないわけじゃないんだなと安心もした。

 仕事が終わって家に帰ってきて、いつものように彼女と話をすると、どうやら彼女はちょっと元気になったみたいだった。

 食事でというよりは終わった後のトークで元気が出たらしい。なるほど、そりゃあよかったと思ったんだけど、薄っすらと僕の力ではだめだったんだなあっていう思いが湧いてきそうになった。これがさすが彼女って思うところなんだけど、その思いを打ち消すように、僕のおかげでもあるって感謝してくれた。きっと僕がそんなバカバカしいことを考えることが彼女には手に取るようにわかったんだろう。

 彼女に感謝してもらえたことで嬉しくなったし、役に立たなかったという自虐思考に陥らずにすんだ。

 なによりも彼女の口から元気になって体が軽いっていう言葉を聞けたのが嬉しかった。どうにかして彼女に元気になってほしい、つらい思いをし続けてほしくないっていう願いが叶ったような気持ちだった。

 本当にちょっとだけ元気になっただけで、まだまだ本調子とはいかないかもしれないけど、でも僕にとって彼女がちょっとでも元気になったことがすごく大きな嬉しい出来事だった。