かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

あめちゃん

 彼女は仕事中におっちゃんから飴をもらったらしい。その話を聞いた時、え?ってなった。だって仕事中だよ?おっちゃんって知り合いとかじゃないよ?ただのお客さんよ?

 僕は仕事をしていてお客さんからお菓子をもらうなんて経験はしたことが無い。そりゃあ僕が男だからおっちゃんも僕に飴をあげようなんて思わないだろうけど。以前から顔見知りで仲良くしているお客さんが不意にお菓子をくれるというのはまだ分かる。なんとなくありそうだ。でも急におっちゃんがぽっけをゴソゴソして飴をくれるってどういう状況?ってなる。

 きっとおっちゃんは、いい子だなあとか可愛いなあとか何かしら彼女にポジティブな印象を受けていい気分になったんだろう。そしてポケットに飴が入っていたのを思い出して彼女にあげた。そう考えると納得できる。唐突に飴を提供してくるおっちゃんとかちょっと怖いもんね。何かしら彼女に好感を抱いたからと、ポケットに入ってた飴をくれるってのもちょっとびびるけど。

 彼女はおっちゃん世代に好感を持たれやすいような気がする。可愛がられそうな雰囲気がある。そうね、おっちゃん世代って50代過ぎくらいの人ね。娘に煙たがられ距離を置かれているおっちゃんだけど、娘と同世代くらいの彼女は笑顔で明るく接客してくれるから可愛く思えて飴をあげたくなっちゃうみたいな。

 職場に荷物を運んでくるおっちゃんがいるんだけど、彼もまた彼女に好感を持っていると思う。担当が変わってそのおっちゃんになった最初の頃は無愛想で、なんだか怖そうだなあなんて思っていた。次第に心を開いてくれたんだけど、彼女が笑顔で挨拶するとおっちゃんは嬉しそうで、心を開くきっかけとなったのは彼女なんじゃないかなあと思っている。彼女が挨拶していい感じにお返事を貰っているのを見て、僕も、あのおっちゃんそんなに怖くないんだと思って積極的に挨拶できるようになった。なんとも情けない話である。

 彼女はおっちゃんから面白い話を仕入れていて、昨日はその話をしてくれたんだけど、話の内容の面白さも然ることながら、彼女にそんな話をしてくれるほどに心を開いてくれているということが面白かった。おっちゃんとそんな話したんかい!みたいな。

 そうやって誰かの心を開かせる魅力を彼女は持っていると思う。僕も彼女のお陰で心を開けた一人だ。

 職場で荷物運んで来てくれるからちょっと顔合わせる程度の関係で終わらず、そこから一歩踏み込んで関わっていけるのが彼女の良い所だと思う。おっちゃんもきっと彼女のと交流が仕事の合間のちょっとした気分転換になっていると思う。

 彼女はいろんな人に小さな幸せを与えながら生きているのかもしれない。天使か。