かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

責任

 彼女は責任感がある。

 与えられた仕事をきちんとこなすし、自分の立場を踏まえて何をするのが一番良いのかというのを考えられる。自分より下の立場の人に対して、どういう風に接してどう指導するのが良いのか考え、責任をもって接することができる。僕達の職場において、僕や彼女は立場的には下の方で、指示を出す権限とか仕事の決定権みたいなものはほぼ持ち合わせていない。だから僕達にできることというのは限られているんだけど、彼女はその中で可能な範囲で改善案や新しい取り組みを考えだすことができる。越権行為にならないよう気も配れるし、必要であれば上司にきちんと確認も取る。自分が提示した案によって周囲にどのような影響をおよぼすかもきちんと考えている。いい案が思い付いたからとりあえずやってみよう、みたいな軽率な行動はしない。良い案だと思えばそれを不便なく、周囲の人たちも受け入れられるような状態に持っていくように努力できる。作業の改善が必要だと判断すれば新たな仕組みを作るとともに、手順のメモや注意事項をまとめて分かりやすくしてくれる。

 これらの行動は全て、彼女の仕事に対する真剣な姿勢、責任感によるものだと思う。僕が今まで出会ってきた職場の仲間の中で彼女が一番その部分で優れていると思う。自分の置かれている立場、状況を踏まえて考えることができるというのは、言葉にすれば簡単なような気がするけど実際やるのは難しい。彼女は責任や義務を果たし、権利を得た上で主張する。だから「お前が言うな」とはならないし、言葉に説得力が生まれる。

 彼女の行動は常に責任とか権利というものを考えた上でとられているような気がする。それが彼女の強さだと僕は感じる。それと同時に彼女の弱さでもある、とも感じる。

 彼女は自分の内側から発生する不安に対して強いんだと思う。例えば、すごく練習して臨んだ大会で失敗したらどうしようとかいう緊張感。そういうものに彼女は強い。自分がうまくやれば乗り越えられるという問題からのプレッシャーに耐性があるようだ。それはおそらく、こうやれば良いという明確なものが自分の中にあって答えが見えているから。練習を積み重ねて準備をした上で、自分ならやれるという自信があれば彼女は問題に立ち向かっていける。

 これが彼女のなかで明確な答えが見えていないものだと、途端に彼女は不安になってしまう。他人という不確定要素が絡んでくることもそうだし、自分がよく知らないことや経験が浅いこと、いきなり降って湧いた問題と対峙することになると彼女はものすごくストレスを感じるし不安になるんだと思う。そういう問題に立ち向かわなければならないとき、彼女は助けを求めてくれる。僕や周りの人達に。でもそれは彼女が信頼している人に対してしかできないから、そういう人がすぐ近くにいない時や、信頼している人でも自分の今抱えている問題に対して明確な答えを出してくれないというようなことがあれば、どんどん彼女は追い詰められてしまう。

 それでも彼女は逃げ出すという選択をとらない。僕はそういう彼女が好きだし、良い所だと思っている。傷つきながらも更に立ち向かっていく感じが、見ている方としては心配だし不安にもなるんだけど応援したくなる。

 全てが責任感というものによってもたらされるプレッシャーやストレスではないけど、僕がそばにいることでその責任を少しでも軽くできるように支えてあげたいと思う。そこから生まれるものだけでなく、彼女の持つ不安とか悲しみとか怒りとかそういうものを全て受け止めてあげたい。

 責任感があって行動力があって傷つきながらも前に進もうとする彼女が大好きだから。