器用

　ちょっと前に彼女はコツをつかむのが上手いとか、器用っていう話を書いた。要領がいいなんて表現もできると思う。

　彼女は対人関係においてもそういう要領の良さ、器用さっていうのをうまく発揮している。

　周囲の人に対して誰にでも同じように接することができる。もちろんそれは外面的であり、内面で彼女がどう思っているかはまた別の話。むしろ心の内で嫌だとか嫌いって思っている人に対しても、極めて普通に接することができるのが彼女の素晴らしいところだと思う。これも彼女の器用さというか立ち回りの上手さだと思う。

　人間関係において彼女が器用だなあって思うのは、偏らないことだ。

　人って自分を受け入れてくれやすい人、自分にとって居心地のいい人のところへ行きやすくなるだろうし、話が合わない人より合う人に話し掛けに行きたくなるものだ。誰だってそうだと思うし、僕はこれが顕著だ。わざわざ無理して話辛い人のところへ行こうとは思わないし、居心地の良い人がいればその人のところにずっといる。自分語りになって申し訳ないが、僕は高校に入学すれば中学時代の友人とは疎遠になり、大学に入学すれば高校時代の友人とは疎遠になり、社会人になれば大学の友人と疎遠になっている。それは当たり前の状態なのかもしれないけれど、僕はどうにも今同じ環境にいる人とのコミュニケーションで精一杯になってしまう。その時代その時代で出会った人達との交流によって、それ以前の交友関係にまで気が回らなくなるのだ。今は彼女に持てる全てを注ぎ込んでいるといってもいいくらいで、多少友人との交流もあるものの僕の頭のなかは彼女でいっぱいだ。

　その点、彼女はうまくいろんな人と交流している。確実に僕より広い交友関係において、誰かとばかり遊んでいて他がゼロになるなんてことはない。これは以前にも言ったけどうまく予定を調節して遊ぶ時間を作ったり、携帯での交流をしたり、彼女はいろんな方向に意識を向けていられる。それが器用だなあって思う。交友関係だけではなくて、職場でも誰か一人とワイワイ盛り上がるのではなくて、いろんな人と会話して、いろんな情報を得て、それをまた別のコミュニケーションに生かしている。彼女に職場を取り仕切る権力があれば、この職場の仕事はもちろん人間関係も円滑に進むんじゃないかなあと思うくらい。

　人間関係が器用ってなんだか、狡猾な感じを与える言い方かな。彼女は打算があるわけではなく下心があるわけでもなく、ただ周囲の人に好かれて仲良くしていたいという思いがあるだけだ。その純粋な思があるから、良き友人に恵まれ、僕も彼女のことを好きになったんだと思う。