かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

紛失

 彼女が携帯をなくした。それは昨日のこと。珍しく僕が先に仕事を終え、彼女に別れを告げて家に帰ってきた。仕事がんばってねーなんてメッセージを送ってお返事が来るのを待っていたんだけど全然連絡が来ない。休憩に入るはずの時間になっても、仕事が終わったはずの時間になっても連絡が来ない。家に携帯忘れたのかなって思ってたんだけど段々何かあったんじゃないかと不安になってきた。彼女は携帯をもう一つ持っているので、携帯に何かトラブルがあったにしても連絡が来るだろうと待っていた。

 しばらくして彼女から、携帯がないっていう連絡が来た。携帯が使えないとか異常があって困ってるくらいかと思っていたので、予想よりも深刻な事態にちょっとだけ慌てた。

 状況を把握しなきゃと思ったけど、彼女もきっと携帯がなくて焦っているだろうと思い、質問攻めにしないように注意して話を聞くことにした。どうやら彼女は祖父の家へ寄ってから仕事に向かったようで、自宅から祖父の家、そして職場へと向かっている最中のどこかで失くしたようだった。どこかに落としたのか、車の中に置いてあったのを盗られたのか、祖父の家に忘れたのか、夜も遅くなってしまったので確認もできなくて彼女は困っていた。

 彼女の気持ちが痛いほどよくわかったので、どうにか元気付けてあげたいなあと、携帯の現在位置を探す方法とか、もし見つからなかった場合の対処の方法なんかを調べてみたり、祖父の家に忘れた可能性が一番高いだろうって話をして不安を拭ってあげられないかなあと必死だった。

 どこにあるか分からないし、祖父の家にあることも保証はできないけど、彼女をできるだけ安心させたいと思って、大丈夫だよっていっぱいはげました。きっとあると思ってたし、もしなかったとしたらまたその時僕が責任を持ってどうにかしようって思ってた。

 携帯がないのでいつもの様に寝る支度をした後にごろごろしながら電話ができなくて、いつもの生活から何かが欠けてしまったような感じがした。布団に潜り込んで無音の中眠りにつこうと目を閉じていたけどなかなか眠れなくてしばらく起きていた。彼女と電話をしてちょっと眠くなってきて、うとうとすることがどれだけ幸せなことかが身にしみて分かった。

 結局ほとんど眠れないまま、朝早く起きて携帯を探しにいく彼女を送り出した。送り出す時に僕がなぜか不安でいっぱいになって、もし無かったらどうしようどうしようってなってドキドキしてしまった。もちろん僕の不安が彼女に伝わってしまってはいけないと思って元気に送り出した、はず。

 結局彼女の携帯は祖父の家で見つかって、僕も彼女もひと安心した。

 ほんとなら僕も一緒にあわあわ言いながら彼女と一緒に探してあげたかったなあなんて思った。

 彼女が困っている時に離れていることが何より一番もどかしい。