かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

掌握

 彼女の人付き合いにおいての気遣いというのは、人間関係を円滑に進めたり場の空気を和ませたりとかなり活躍している。

 例えばピリピリしている人がいたとしたら、彼女はその人に話し掛けて気を紛らわせてあげられる。構ったら面倒だと分かっている地雷を、彼女はそれでも踏み抜いていける。それによってピリピリしていた本人も助けられているし、そのピリピリ感で嫌な思いをしていた他の人達も助けられている。普通イライラしている人がいたら放っておくとか触れないように刺激しないようにと避けるものだと僕は思っていたんだけど、彼女を見て考え方が変わった。仕事が遅れ気味で時間が押してイライラしている人がいたら、その人と何気ない会話をすることで切羽詰まった気持ちを吐露する機会を与えてあげて、心を軽くしてあげられる。嫌な客にイライラしている人がいたら、どうしたのって話を聞いてあげてストレスを発散させてあげられる。内心めんどくさいなあと思っているとしてもそれを表に出さないから偉い。こうやって誰かのストレスを軽くしてあげることで、職場はかなり恩恵を受けていると思う。彼女がいないとピリピリしっぱなしだし。彼女のお陰でいい気分で仕事ができて職場の雰囲気が良くなったり、楽しい会話が増えたりするわけだ。

 あとは、誰かと誰かの間を取り持つスキルが高い。誰かと誰かが衝突しそうになったときに、片方ずつに相手の気持ちを当たり障りなく伝えて、誤解や意見の相違をうまくすり合わせて問題解決を図ることができる。これによって無意味ないがみ合いとか衝突が避けられた機会は何度かあるんじゃないかと思う。

 彼女は職場の人達とわりとまんべんなく話ができる。だからあの人はこう思っているとか、あの人はあの人のことをよく思っていないとかいうことに関しての理解度が高い。僕にもたまに一部で決まっているローカルルールみたいなものを教えてもらう。それをやるとあの人達から文句が出るよみたいな。それによって未然に誰かから嫌われるとか文句を言われるという状況を防げている。

 彼女はリベロのような存在だと思う。常に状態が均衡であるように、あっちの話を聞いてこっちの話を聞いてって動き回っている。一定の場所に留まらず、上手くバランスを取っているのだ。あの人の喜ぶこと嫌がること、この人の喜ぶこと嫌なこと、というのを把握しているから上手く立ち回れるし、彼女自身が誰かと誰かの間に入ることで緩衝材の役割を果たし、人間関係を円滑に進めることができる。

 これを書いていて彼女と彼女の友人と僕という状態で会話をする機会があった時のことを思い出した。僕は彼女の友人とあまり面識がなかったから、その状況に居心地の悪さを感じてしまいそうなものだ。しかし彼女が僕に対して自然に話題を振ってくれるので僕は気まずくならずに会話に参加できた。そういう状況で孤立してしまいがちな僕なのに。きっと僕がそうならないように彼女は気遣ってくれていたんだろう。でも決して気遣いをしているという感じを出すわけではなく、彼女の振る舞いは自然だ。当然のことのように繊細な気遣いができる、というのが彼女の良い所だと思う。

 彼女と僕以外の誰かを含めた三人で会話していると、彼女は人をよく見ていてその人がどんな人なのかよく把握しているなあって感じる。彼女がいると会話が盛り上がるのだ。相手から上手く話を引き出したり、相手の発言に対して切り返して盛り上げたり。よく相手を観察していなければできないことだと思う。年上の人に対するツッコミとかイジるような発言も際どいラインながら相手を不快な思いにはさせない絶好の所を突いていく。おかげで相手は大喜びだ。

 彼女がいるだけで場が明るくなるし、会話が弾む。彼女の気配りによって人間関係や職場の空気が良好になっている証拠だ。