かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

めかぶ茶

 今日は彼女と遊んだ。

 そして今日は僕の誕生日。彼女は今日のためにわざわざ休みをずらしてくれた。

 今年は誕生日プレゼントを一緒に買いに行くということになっていた。

 彼女は何をあげるかはある程度考えてある、と言っていて、それが何なのか教えてほしいかと、以前尋ねられた。だけど僕はわくわくを取っておきたかったので、当日まで内緒にしておいてとお願いしていたのだった。

 おかげで今日まで何をプレゼントしてくれるつもりなのかも分からず、どこに買いに行くのかも分からず、とにかくわくわくして待っていた。

 そして今日、まずはふとした思いつきでブッダさんの職場へ顔を出すことにした。この間、我々の職場に立ち寄ってくれたのもあって、いつも来てもらってばかりだからという理由と、単にブッダさんに会いたいからという理由で。

 ブッダさんの職場へ向かう途中、彼女がプレゼントは近くのショッピングモールで買える思うと言い出した。

 ドキッとする僕。

 プレゼントがなにか聞きたい?という彼女。

 もう聞きたい、我慢できない!ってなった僕は教えてもらうことにした。もう十分すぎるくらいわくわくしたしね!

 事前に、服かなあ、靴かなあ、それとも雑貨かなあ、本かなあ、なんてわくわくしながら予想したんだけどその全てが外れて、正解は眼鏡だった。

 それを聞いた僕は大喜び。なんでって、ずーっと眼鏡が欲しかったからだ。なんだったら学生の頃からずっと欲しかった。

 僕は視力が良くて、眼鏡とは無縁の人生を送ってきた。でもそれゆえに、眼鏡というものに憧れてしまう。普段眼鏡を掛けている人からすれば、掛けなくていいほうが楽で羨ましいと思うだろう。その通りだと思う。でも僕は眼鏡かっこいいという気持ちをずっと持ち続けていた。

 眼鏡に憧れているのだけれど、おしゃれ用の伊達眼鏡を買うのはちょっと恥ずかしい。雑貨屋さんで売っている眼鏡は作りが安っぽいし、かと言って眼鏡屋さんに行って度なしの眼鏡を買うというのもなんだか気が引けた。

 今まで眼鏡を掛けてこなかった事によって、眼鏡を特別視してしまっているため、余計に気軽に手が出せないのだ。

 だからずっと僕は眼鏡に憧れるだけの人生を送っていた。

 それが今日、ついに、眼鏡を手に入れられるのだ。僕の心は踊った。それも、彼女に誕生日プレゼントとして買ってもらえる。こんなに素敵なことってあるだろうか。

 何をプレゼントしてもらえるのか聞いてしまったらわくわくが終わってしまうと思っていたけど、実際は眼鏡を買ってもらえる!という新しいわくわくが始まった。

 僕がずっと眼鏡を欲しがっていたこと、彼女は分かっていてくれたんだなって思ったらそれもすごく嬉しかった。彼女は僕のことしっかり見てくれてる。嬉しい。

 彼女ともその後話をしたんだけど、プレゼントを貰う時って、喜ばなきゃいけないプレッシャーがものすごい。それは誰から貰う時でもそうだ。きちんと嬉しいっていう気持ちを表現しなくっちゃって思う。心のなかで喜んでいても、それを表に出さないとプレゼントをした側には伝わらないから。だから彼女がなにをくれるのか教えてくれる前にも、ちゃんと嬉しい気持ち伝えるようにしなきゃーなんて思ってた。

 でも実際、眼鏡だよって教えてもらったら、そんなこと考えなくても勝手に大喜びしてた。とっても嬉しかったから当たり前だね。

 るんるんでブッダさんの職場までやってきて、ふらふらしているとブッダさんを発見。おつかれさまですーなんていいながらしばらく話をした。仕事中だから邪魔しちゃいけないって思いつつ、ついつい話をしてしまう。結局40分くらいおじゃましてしまった。

 嫌な顔ひとつせず、楽しそうに話をしてくれて、帰る時も笑顔で見送ってくれて、本当にブッダさん素敵ってなった。気分がめちゃくちゃ晴れやかなの。たぶん心のケアをしてもらってるんだと思う。

 ついでに、もうすぐ異動になる新人君がこの職場にいて、彼は以前我々の職場にお手伝いで来てくれた事があって、多少面識があった。異動しちゃう前に会えたらいいねなんて冗談半分で言っていたんだけど、うまいこと今日いて、彼にも会うことができた。彼は彼女の顔を覚えていてくれたみたいで、どうもーってなった。僕のことはどうだったのか分からない。

 利発ないい人って感じですごく印象が良くて、前回会った時よりも僕たちの中で評価が上がった。わざわざ向こうから会話に入ってきてくれたからね。いいやつ。

 おかげで、話ができてよかったっていういい気分になった。

 そんなわけで、楽しい会話という誕生日プレゼントをもらって、気分よくブッダさんの職場を後にした。

 手に入れたさきイカをもぐもぐしながら、ショッピングモールへと向かった。

 僕はウキウキしていた。もしかしたらそこまで見た目的にウキウキが出てなかったかもしれないけど、かなりウキウキしていた。

 ショッピングモールに到着し、さっそく眼鏡を見にいくぞーと歩き始めたら、ちょうど眼鏡屋さんの斜め前辺りで、物産展が開催されていた。

 すーっとそれに吸い寄せられていく彼女。僕も楽しそうなのやってるー!とついていく。途中、あれ?眼鏡後回し?って思ったけど、目の前に並ぶ商品が珍しい物ばかりで見るのが楽しくて、まあいいや!ってなった。

 彼女が自分用におみやげを買い、気を取り直して眼鏡屋さんへ。今流行のブルーライトカットの眼鏡があって最初はそれを見ていたのだけれど、熟慮の末、普通の眼鏡を買うことにした。何種類もある眼鏡を彼女と一緒に選ぶのが楽しかった。こっちを掛けてみて、あっちを掛けてみて、もう一度こっちを掛けてみて、あれやこれやいっているのが楽しい。僕は優柔不断だから、すぐにすぱっと決まらない。でも彼女は根気よく付き合ってくれた。

 彼女のアドバイスと、僕の好みを総合した結果、これにしよう!という眼鏡が決定。出来上がるまで時間が掛かるので、他のお店を見て回ることに。

 輸入雑貨屋さんでチョコを買い、僕が唯一気軽に入れる服のブランド店に入って服を見て、入口付近にあったアウターに一目惚れした。試着してみると、すごくいい感じ。彼女も「(服が)かっこいいよ」と言ってくれた。問題はお値段で、即決できるほどお金を持っていなかったため、衝動買いせずに少し時間を置いて考えてみることにした。

 一旦そのお店を出て、彼女の仕事用のカーデイガンを探した。お目当ての店にお目当てのカーディガンがあって一件落着。もう少しお安ければなお良かったかなというような感じ。そうこうしている間に眼鏡が出来上がる時間になったので、取りに行った。

 わくわくどきどき。

 眼鏡の説明を受けて、紙袋に入れてもらって受け取る。嬉しいのと、大事にしなきゃという思いによって、僕はすごくしっかり両手で紙袋の取っ手を握りしめていた。不自然なくらいに。自分がそうしていると気づくのにしばらくかかった。完全に無意識だった。嬉しくて嬉しくてたまらなかったのだ。

 そのまま本屋さんに立ち寄り、漫画を何冊か購入。最近はお試し読み用の冊子がたくさん置いてあって楽しいね。良いことだと思う。彼女が試し読みして面白かったものを僕に渡してくれるので、それを読んで楽しむという流れになる。彼女の中の基準をある程度越えたものなので当然おもしろい。この流れ楽しい。

 それから雑貨屋さんに行って彼女おすすめの石けん置きを購入。これで少し前に買った彼女とお揃いの石けんをやっとつかえる。ついでに食べ物も買った。おやつ収集に余念がない。余念がない割に買ったことを忘れてしまって帰りにこれ食べてない!!ってなるのだけど。

 そしている間に僕は決心した。さっきの服買おうって。

 ATMコーナーに行ってお金をおろして気合を入れ、まず赤ちゃん用品店にいってみずまんじゅうくんにあげられるようないいものないかなーって見て回った。勢い良く服屋さんに行けばいいのに、ついお店が目に入って行きたくなっちゃった。

 可愛い服がたーくさんあってみずまんじゅうくんに着せたい!!ってなったけど、もう服はたくさんあるっぽいんだよねって彼女が言っていたから泣く泣く諦めた。でもおもちゃで、ちょっと面白いものがあって、彼女がそれを買ってあげたい!って熱心に眺め始めた。ただ場所を取りそうなものだったため、勢いで買ってしまうことは防げた。ただしプレゼント候補のNo.1に躍り出たことは間違いない。

 十分に赤ちゃん用品を楽しんだ後、服屋さんに到着。活きのいいおじさんに接客されながら無事購入できた。ほくほく。僕が悩んでいる間に売れちゃってなくてよかった。さすがにないか。

 これで欲しいものも必要なものも全部買えた。今日は彼女も僕もかなり出費してしまった。お誕生日だからいいよね!

 車に戻って、さっそく眼鏡を掛けて、しばらく休憩した。買ってきたチョコを食べつつ、ゲームをしてまったりした。彼女が眼鏡似合うって褒めてくれてすっごく嬉しかった。褒められたうっひょーい!って調子に乗るじゃなくて、じんわり心に染み渡る嬉しさというのか、じーんと嬉しくなる感じだった。

 それから晩ごはんを何にするか相談。当初焼肉でも食べるか!って思ってたんだけど、彼女がお鍋は?って提案してくれて、それもいいね!ってなって考えた結果、お鍋に決定した。

 お店について、初めてちゃんと明るいところで眼鏡を掛けた僕を見た彼女が、改めて似合うって褒めてくれた。嬉しい。写真を撮ってくれたんだけど、自分で言うのもなんだけど、似合ってた。眼鏡掛けてるのがしっくりくる。不思議。

 お鍋はいつも通り美味しくって、たくさん食べてお腹いっぱいになった。以前彼女がお鍋をよそってくれるのがすごく良いって言っていたのに、今日は僕が夢中で彼女の分もよそっていて、彼女が笑いながらそれを指摘してくれた。言われてみれば僕はなぜか一生懸命よそってた。彼女によそってもらって幸せを感じてもよかったのに。でも、彼女によそってあげられるのもそれはそれで幸せなのだ。

 食事を終え、場所を移した僕たちは、車の中でしばしの休憩を楽しんだ。

 彼女が、楽しくできなくてごめんねとか、サプライズがなくてごめんねとか、いろいろ申し訳無さそうにしてくれたんだけど、全然そんなこと思わなくていいよ!って思った。僕はとっても楽しかったし、とっても嬉しかったし、とっても幸せだった。彼女が僕のために何をプレゼントしたらいいか考えてくれたこと、そして眼鏡をプレゼントしてくれたこと。一緒に選んでくれたこと。それから似合うって褒めてくれたこと。服を買う時もいいと思うって背中を押してくれたし、一緒に楽しく他のお店も見て回れた。欲しいものや良いものをたくさん買えた。彼女と一緒だったからこそだ。

 わざわざ今日休みをとって、僕のために一日一緒にいてくれて本当に嬉しかった。他の誰かがすごく高価なものをプレゼントしてくれても、他の誰かが一日一緒にいてお祝いしてくれても、彼女と一緒に過ごした今日には敵わない。僕にとって最高に良い一日だった。

 眼鏡が嬉しくてたまらないので、これを書いている今も掛けてる。違和感ほとんどないし、疲れないし、とっても良い眼鏡を買ってもらえた。最高。

 今日買った服もまた彼女とお出かけする時に着ようと思う。

 彼女と一緒に入られる今日が、もっと長ければ良かったのに。

 24時間、彼女と一緒にいたい。彼女には、私は嫌って言われた。そりゃそうだなあとも思うけど、僕は真剣に24時間一緒にいられたらいいなあって思う。それくらい彼女といられる時間は僕にとって良いものってことだね。

 彼女のおかげで誕生日を楽しく幸せに過ごすことができた。

 本当にありがとう。

 眼鏡が嬉しくてたまらない。