かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

ちんぴらの活躍

 お休みでのほほんとしている僕のもとに、彼女から連絡が来た。

 職場にクレームが来た!というもの。この時点では何のクレームなのかも分からず、ただただ我々宛ではないと良いねという会話をしただけだった。

 しばらくすると彼女から再び連絡が来た。

 先ほどのクレームの詳細。

 ざっくり言うと、職場で女性従業員と男性従業員が仲良く楽しそうに話していて気分が悪かった!という感じ。

 女性従業員というのが、私だーって彼女が言っていた。

 確かに、書かれている特徴から導き出すと彼女のことについて書かれているように感じた。

 しかしこのクレームには引っかかるところがあった。

 文章でのクレームだったわけだが、なーんか文面全体から、妬みや僻みのようなオーラを感じるのだ。

 歳をとった女性が、若い女性が楽しそうにしているのが気に食わないというような、負のオーラ

 僕はそのことを指摘しつつ、今の職場の雰囲気的に、楽しそうにワイワイしてしまう時が多いから、この指摘は職場全体に掛かって来るものであって、もしもここに書かれている女性従業員が彼女であっても、彼女だけが責められるようなものではないと伝えた。

 クレームに書かれていた男性従業員が僕ならば、彼女と仲良く仕事をすることも多いから、普段気をつけていたもののそういう風に見えていたならばもっと気をつけなければいけないなと思うところだが、僕ではないことは確定済みなのである。

 もちろんこれを受けて気をつけなければいけないな、とは思うのだが、なんとも納得出来ないクレームでもやっとしていた。

 すると再び彼女から連絡があり、職場の最高権力者であるチンピラと話をしたらしく詳細が送られてきた。

 どうやらチンピラの上司とチンピラが話をしたらしいんだけど、その時に「誰のことかわからないよね~」という話になったようだ。

 先程も言ったように、書かれていた情報から判断すれば、彼女と結びつけるのが一番簡単なのだ。もちろんそれが正解かどうかは分からないけどね。ただ短絡的思考のチンピラがここで「ああたぶん(彼女)さんのことだと思いますよ」とか言っちゃうことだって考えられた。

 意図してのことなのか分からないけど、彼女を庇ってくれた構図となった。ここで僕の中のチンピラの評価がグンと上がった。

 更に「一定以上の容姿の人は(そういうことを)言われちゃうから仕方ない。ただおしゃべりには気をつけよう」と言ってくれたらしい。

 それは僕と同じ見解で「ブサイクな女が男とワイワイしててもクレームにはならない」と僕が言うと「そこらのブスがわいわいしてても気にならない」とチンピラも言っていたと教えてくれた。

 こんなところでめちゃくちゃ気があってしまった。

 これって、チンピラも彼女のことを一定以上の容姿である、つまり可愛いと思っているってことだよね。チンピラに可愛いと思われても嬉しくないかもしれないけど、彼女の可愛さがちゃんと分かっている点は評価できる。

 彼女がごめんねってチンピラに言いに行ったみたいなんだけど、チンピラ的には全然気にしていなかったみたい。

 これが以前の上司だったら、必要以上に問題視して、なんとしてもクレームになった原因の人物を突き止めようとし、更にその人を責め立て、そしてアホみたいなルールをつくってがんじがらめにするという悪手を打ちまくっていただろうと思う。

 この日、僕と彼女の中に、チンピラありがとうという感情が初めて芽生えた。

 こうして、クレームという一大事からとりあえず脱し、落ち着きを取り戻した僕たちは、再びクレーム内容について考えを巡らせた。

 すると、このクレームの女性従業員というのが彼女ではない可能性が少しずつ高くなってきた。

 この男性従業員の方はおそらく、くまもんと思われるのだが、彼女は現在くまもんと距離を置いているため、最低限の会話しかしていない。今回のクレームが、くまもんから仕事の指示を受けていた場面という可能性はあるが、さすがに仕事の指示を受けている場面でいちゃついているように見えるわけもなく、仮にその場面を指摘されたとしたら更に意味がわからなくなる。

 そうすると別の人かもしれないという考えが浮上してくるわけだ。

 件の女性従業員の特徴が彼女にしか当てはまらないわけではなく、可能性のありそうな人は彼女以外にもいる。考えられる可能性は多岐にわたり、結局のところ誰のことかわからないというのが一番適当な答えなのかなと思う。

 そして、文面からクレームを書いた人物像もなんとなく想像できるわけで、チンピラの言葉を借りるならば、クリスマスが近くて寂しいおばさんといったところで、若い人が楽しそうにしているのに過剰反応して、衝動的にクレームを出したというところなのだろうと推察できる。

 きっとこのババアの目には、若くて可愛い女の子が男にちやほやされて調子に乗っている、というように見えたのだろう。

 クレームが届き、更にそれが自分のことかもしれないという、めちゃくちゃショッキングでテンションががっつり下がりそうな事態だったけど、チンピラの対応が想像の遥か上を行く良いもので、彼女も嫌な気持ちを引きずることなく、むしろネガティブな気持ちから開放された反動で爽快な気分になれたようだった。

 まあチンピラの素敵な対応は、もしかしたら上司との会話で手に入れた意見を自分の意見のように語っただけかもしれないのだが。まあ今回はそのことについては目を瞑っていてあげようと思う。

 ババアの嫉妬ってあるよね。ジジイが若い男に嫉妬するってあんまり聞かないけどさ。あー醜い醜い。

 おしまい。