かばのにおい

「彼女」について綴るための場所。非常に私的な内容となりますのでご了承ください。

映画

 今日は久々に彼女と遊んだ。久々という基準が一般的にどれくらいか分からないけど、僕にとっての二週間は久々と表現しても余りあるほどの長い期間だ。
 僕がどれだけこの日を待ち望んでいたか。前回遊んだ日からもうすでに次の遊べる日のことを考え、まだ当分先だろうなと心を落ち着かせ、遊べる日の一週間前にはもう一日一日を指折り数えて待っていた。日々の辛いこととか嫌なことを、何日後には彼女と遊べるからと自分に言い聞かせて耐えてきた。何日も前から彼女と遊ぶ日のことを思い描いていた。今日だけじゃなくて彼女と遊ぶときはいつもそう。楽しみで楽しみで仕方ないのだ。
 そんなわけで待望の今日、まずは映画を観に行くことになった。
 彼女と仲良くなって一年以上経つが、映画を観に行くのは今日が初めて。お互い映画を観るのも好きだし、観たいなと思うものも結構被るのに今まで来たことが無かった。映画を観に行く時間があったら何か別のことをしたい、というのが僕と彼女の共通意識としてあったからだと思う。そう書いてしまうと、映画よりも優先したいことが無くなったから映画を観に行ったみたい。ちがうよ!今日観に行ったのは彼女が気になっていた映画を観に行こうって前々から計画していたからで、その計画の実行日が今日だっただけで、やること無いからとりあえず映画行こうかみたいなそういう行き詰まった感じじゃないよ!わくわくだったから!スキップしたくなるくらいわくわくだったから!
 ここまで書いて思ったけど、その前にご飯を食べた。チケットだけ先に買ってご飯に行った。このスタイル好き。チケット先に買っとくスタイル。とっても安心する。ところで彼女は、後に予定が控えている時の暇な時間というのが苦手だ。だから今回のように、映画まであと一時間あるってなったときに時間が気になって暇な時間を楽しめないということが起こりうる。そこで僕は時計をこまめにチェックして、彼女が時間を気にしなくてもいいようにタイムキーパーを務めた。それでも気になってはいただろうけど、僕が気にしておくことで彼女が少しでも安心できていたら嬉しい。
 そういえば彼女は今日も僕がプレゼントしたネックレスをしてくれていた。嬉しかった。でもこんなこと書くと今度も付けてこなくちゃいけないっていうプレッシャーになってしまうかもしれない。いいんだよ!好きに付けてくれていいんだよ!もちろん付けてくれたら嬉しいけどね!
 さて肝心の映画だけれども、始まる前にちゃんと席について僕と彼女はポップコーンを食べていた。塩味のポップコーンがたくさん食べたかったのにキャラメルの比率が高いと嘆く彼女が可愛かった。僕がキャラメルばっかり食べることによって彼女の塩味比率が上がることを願っていた。
 映画を観始めて、映画を観るくらいだったら他のことをした方がよかったっていう思いが湧くかなあなんていう思いも頭の片隅にはあったんだけど、そんなことは全くなくて楽しめた。彼女が隣にいるっていうだけで特別な感じがした。凄くいいなって思った。途中、ポップコーンを口いっぱいに頬張っている彼女を横目で見ていたんだけど、ふと目が合ってしまった。そしたら面白くなっちゃって笑いを堪えるので必死だった。そんなにお客さんがいたわけじゃないけど迷惑になるのは間違いないし、ここで笑ってしまったら大変だと思ってなんとか笑いを噛み殺した。口いっぱいにポップコーンを入れた彼女が、もしょもしょ食べているのが可愛かったんだもの。その状態でこっち見て目があったら笑うよ。リスとかハムスターみたいで愛らしい。
 彼女と映画を観るっていうのは他の誰と観るよりとても良いものだと思った。彼女が隣にいてくれるだけでこんなにも違うんだなあって。心が満たされた感。
 その後はお店をまわって、彼女が欲しいって言ってたものを買いに行ったんだけど、目的のものが無かった。残念がっている彼女がとっても悲しそうで、かわいそうだった。そんな彼女を見ていると無力感に襲われる。欲しかったものを手に入れてあげることもできないし、へこんでいる彼女を上手く元気づけてあげる言葉も見つからない。あわあわするだけ。不甲斐ない。結局彼女が妥協点を見つけて、本命と別のものを買うことでお買い物は終了した。
 お買い物が終わると、もう結構いい時間になっていて楽しかった彼女と遊ぶ日に終わりが見えてきた。もっと一緒にいたいって心から思った。お買い物をしてお別れ、ではなくて、そこから家に帰ってお風呂に入って寝るまでの間も彼女と一緒にいたい。まったりと時間を過ごしたい。そんな風にできたらどんなにいいだろうって思う。彼女といる時間が楽しくて幸せでたまらないから、そんなことを考えてしまう。
 晩ご飯を食べて、車内で少しお話した後彼女を家に送り届けたんだけど、彼女との会話の中で新しいキャラクターが生まれた。中国人の王(ワン)さん。なかなか素敵なキャラクターなので今後も活躍してもらいたい。ただ僕が日本語が達者な中国人っぽくしゃべるだけなんだけど、彼女以外の人にこんなことできない。彼女には他の人には絶対見せられないだろうなっていう自分を見せることができる。同じように彼女も僕以外には絶対みせないだろうっていう姿を見せてくれる。この関係が心地よい。彼女の隣が僕にとって一番良い場所だし、彼女にとっても僕の隣が一番居心地の良い場所であってほしい。
 彼女を送ってから自分の家に帰るまで僕は、今日彼女が楽しんでくれたかなあって心配していた。僕自身は楽しめたし、彼女も楽しんでいてくれたとは思うんだけど、もっともっと楽しませることができたんじゃないか、みたいな。僕にできることを精一杯考えて実行しているつもりではいるものの、もっとうまくやれるんだろうなって思うことがたくさんあって、帰ってきた僕はお風呂に入りながら一人反省会をするのだった。